実は色々な役割をもつトライバルラグ
Posted by tribe on 2014年10月20日
今回はこのブログの主役「トライバルラグ」の色々な機能や役割を書いてみたいと思います。例えばみなさんの生活にもよく出てくる「帽子」や「眼鏡」といったものでも、色々な役割がありますよね。「トライバルラグ」にも同じ様に、ただ敷物としてではなくその内外に様々な役割があるのです。
部族のラグやキリムなどの毛織物とは遊牧民の生活から生まれた道具です。
西・中央アジア(アフガニスタン・アゼルバイジャン・イラン・ウズベキスタン・カザフスタン・キルギスタン・トルクメニスタン・トルコなど)は、はるか昔から家畜と共に移動しながら生活する人々=遊牧民が存在していました。
現在では国境線が敷かれ移動の範囲が限られて来ていますが、かつては、羊の食料とな「草」を求め自由に風のように移動生活を続けてきた人たちです。
生活の道具としての毛織物
例として、イランやアフガニスタン国境のバルーチという遊牧民を例に、各種のトライバルラグの役割を挙げてみたいと思います。
1. 敷物―絨毯 (毛足のあるもの)メインラグ…テントの中の主要な部分に敷かれる毛足のある毛織物。
―キリム(平織り)…テント内を広く覆うための敷物で綴れ織り、縫い取り織り、スマック織り、紋織り等。
2. ソフレー食卓用敷物(細長く中央は無地が多い)…食事の時敷物が汚れないように敷く。ラクダや黒羊の毛織物
―ナン包み用 (正方形で房の無いもの) …主食のナンが冷めたり乾いたりしないための保温保湿用布。
3. 袋物―ジュワル(大型の物入れ袋)… 小麦などの穀物や衣類などを収納するためのもので、移動のときにはそのままロバ等の家畜に積むための袋物。
―ホーリジン(鞍かけ袋=サドルバック…主にロバなどの動物の背にかけて両側に振り分けて荷物を入れる袋。
―ナマクダン(塩入袋) … 家畜をコントロールするのに欠かせない塩を収納する遊牧民には欠かせない袋で、家畜に舐められないように口の部分が、細くなっています。
―マフラシュ(布団袋)…立方体の形状で移動の時には主に寝具をいれて、ラクダのこぶに対で2つ掛けられる。テントの中では、赤ちゃんの揺りかごになることもあります。
―バーリシト(枕およびクッション)…移動中はテントの枠組みの棒や様々な物いれとして、テント内では柔らかいものを収納して枕や座布団として使います。
4. 掛け布―ジャジム&ガジャリ(多目的掛け布)…縦糸を染めて強く撚り織り上げる、比較的柔らかい毛織物で、布団の目隠しや大きな荷物を包んで動物に載せたりもします。
―エンシもしくはパルダ-(テントのドア用掛け物)…まるで窓のようにデザインされる間仕切りやカーテンのように使われる。女性のいる場所を隠す役割もします。
5.紐類ナワール(テントベルト)… テントの周りに巻きつけたり、枠組みと屋根を縛りつけたりする細長い織物。
―ギャンダンバンド(荷造り紐)…主に移動時に家畜に荷物を縛りつけるときの紐類テントベルトよりも短めです。
用の美と美の用
これらの生活用具としての毛織物はまさに「用の美」といえるもので、自分の愛する子供や夫のため、または尊敬する部族の長老や世話になった親類や縁者のため、あるいは自分の結婚式のためにまだ見ぬ夫を思いながら、ただひたすらに織りつづけられたものです。
遊牧民は移動の多い生活なので、所有するものは必要最低限のものに限られています。たくさんの機能と合理的な形を保ちながら、装飾性を兼ね備えた、乾いた土地で甘い果実を実らす葡萄のような凝縮した魅力を持っています。