絨毯に定価を付けないわけ?(戦争や金融危機で変化する絨毯価格)
Posted by tribe on 2014年10月20日
みなさんはご存知でしょうか?実はアンティーク絨毯やキリムの他スザニ、絣(イカット)などのラグやテキスタイルといったものは、世界各地のオークションハウスでも大昔から出品され続けている人気の筆頭商品なのです。それもなんと毎月のように各国でオークションは開かれており、アンティークラグやキリムが文字通り「競うようにして」売り買いされているのです。日本で生活していると想像もつきませんよね。
ここ15年ほど海外でのオークションの落札価格やエスティメート(評価額)を調べていますが、NYの同時多発テロやリーマンショックなどの世界経済や政治などの変化も加わって、それらアンティークラグやテキスタイルの価格は毎日変化しています。まるで株のマーケットのようです。
トライバルラグは国際事情により価格が変る?
例えば1970年代から2000年頃にかけての欧米諸国の『トライバルラグブーム』はトルクメン絨毯、シャーセバンのスマック織り、ウズベクのスザニや絣などの逸品は面白いように値を上げていました。陰りをみせたのは2001年に起こったNYの同時多発テロあたりからで、それまでとはうって変わり、特別な希少品(マスターピース)以外は落札価格に達しない物も出てくるようになりました。背景には70年代にラグやテキスタイルを収集していた世代が高齢化し、収集への情熱が冷めて行ったことが決め手だったのではないかと思います。
また追い打ちをかけるようにリーマンショックが起こり、欧米のマーケットは静かになっていきました。30年以上続く権威あるラグマニアの雑誌「HALI」なども全盛期の半分ほどのボリュームになり、紙質も落ち、内容も変わりインテリア雑誌のような新しい絨毯の広告が増えています。
価値のあるトライバルラグをゲットするのは今がチャンス!
イランやトルコのマーケットではそんな状況が市場に敏感に伝わり、それまでは見る事も出来なかったような素晴らしいマスターピースが、ぽつりぽつりとバザールなどの市場に出てくるようになっていきました。
知り合いの日本人コレクターは、超円高であったこの時期に、欧米のコレクターやディーラーから100点以上の素晴らしいキリムやラグを入手されましたが、20年前では同額では半分程度しか入手できなかったことでしょう。
ネットで価格を表示しないペルシア商人の知恵
このように変化の激しい絨毯価格ですが、長い間の変動を見ていると、おおよその相場なるものが見えてきます。アンティーク絨毯は現地でも言い値という感じがしますが、経験豊富な絨毯商達は一目みて現在の相場がわかるようです。同時に変化する国際情勢も加味しながら微妙に価格が決まって行きます。これこそが、長い経験を持つペルシア絨毯の国イラン商人の価格感覚です。
興味深いのは、データーを保管されてしまうとその後の価格変更が難しいネットでの価格公表などには、彼らがとても慎重な姿勢をしめす事です。絨毯は一枚織るのに5年〜10年もかかりますが、何時売れるかわからないような市場でモノを売るための長い間の知恵かもしれません。この辺りの絨毯の価値と価格については最近出版された「トルコ絨毯が織りなす社会生活」という研究書に極めて詳細に述べられています。
世界状況によって価格が変動するのが自然な絨毯には、ほとんど値札が付いていません。それに慣れていない日本人には、常に価格への不透明感があり、購入に対して不安がつきまとうかもしれません。このサイトでは今後出来るだけそのモノにみあった適正な価格や相場を紹介してゆけたらと考えています。