遊牧民の元祖クルド族の毛織物
Posted by tribe on 2015年2月18日
遊牧系部族のなかで、今回紹介する【クルド族】は歴史的も人口的にも欠かせな部族です。このところもっとも危険なイメージのするイラク〜シリア〜トルコ〜イランにはるか昔から生活していたのががクルド民族です。
少数民族と紹介されることもありますが、人口は2500万〜3000万人とも言われ国家として存在しても決しておかしくはありません。世界各地には多くのクルド系の人達も存在していましすが、国家としてのクルディスタンの樹立がクルド民族の念願となっています。このブログでも今話題のクルド族とはどんな人々なのか?
キリムやラグなどの手仕事を通じて紹介してゆきたいと思っています。
クルド族 トルコ東部〜西イラン〜イラク北東地方
(主な集積地…・・セネエ・ビジャー イラン東部グーチャン)
西アジア〜中央アジアに暮らす遊牧系の部族の中で極めて古い歴史を持ち、最も人口が多く、遊牧民らしい生活と精神性を持ち続けて来た人々がクルド族(人)といえるでしょう。
17世紀のアーリア民族の南下によって東西に分かれてしまいましたが、もしも二つの地域のクルド族達が統一していたら、念願であるクルディスタンとい国家が生まれていたかもしれません。人口は西側のクルディスタン地方だけでも2500万人とも言われています。東のホラサーン地方は600万人程度と言われていますが、なかには昔ながらの遊牧生活を行う人達もいます。1994年〜2014年までほぼ毎年訪れていますが、今でも遊牧するクルド族が存在しています。
現在も最高の毛織物文化を保持していますが、西側のクルド族(クルディスタン地方)と東側(ホラサーン地方)のクルド族では織られるキリム・ラグ・袋物などに独自の個性が見られます。
クルディスタンのキリム&ラグ
トルコ東部のヴァン湖あたりからシリア〜イラク国境(北クルディスタン)、イラクの北部山岳地域(サンジャフクルド=南クルディスタン)、イラン北西部のケルマンシャー州(東クルディスタン)に至る広い地域をテリトリーとしています。
キリムやラグの特徴としてはトルコよりの地域では、より直線的な幾何学文様のモチーフが多く見られます。かつてはヴァン湖周辺のハッカリなどに美しいキリムが集まっていおり、卓越した技法のしっかりしたキリムが多く織られていました。
イラク〜トルコ〜イランの国境付近の山岳地帯やアルビル、モスルなどイラク側ではサンジャフクルド(Jaff Kurd)よ呼ばれる力強いモチーフと深い色彩の美しいラグやキリムが織られています。このサンジャフクルドの毛織物は以前から欧米で人気があり、世界的にも高い評価を得ています。
イラン西部の代表的なキリム産地セネエ(現在はサナンダジ)などでは、曲線を帯びた文様が綴れ織りで細かく織られており、地域や身近な民族の影響が現れています。
昔はセネエと呼ばれたこの町の多くはクルド系で、かつての遊牧民の技法をペルシア文化に融合させた独特なキリムは、ペルシア絨毯に多く見られるメダリオンデザインや現地ではボテと呼ばれるペーズリ柄などの都会的で洗練されたモチーフを多く取り込み、綴れ織りで曲線を表現するという、究極の技術で見事なキリムを織り上げています。
基本的にはひし形や三角を重ね合わせた、典型的なキリム文様と呼ばれる幾何学文様が多く、色合いも鮮やかで、メリハリのある力強い印象を受けるものが多いです。綴れ織り以外にもジジムと呼ばれる縫い取り織りや、スマックなどの技法も多様に使いわけています。