トライバルラグの尽きない魅力。その1

Posted by tribe on 2021年5月8日

このブログもかれこれ数ヶ月間放置していましたが、少しづつですが再開したいと思っております。
これまで「トライバルラグ」の魅力とそれらを織る部族に関する様々な情報を紹介してきましたが、数年前までは「トライバルラグ」という言葉はもちろん古い絨毯に関する日本語の情報はあまり目にすることはありませんでした。
2〜3年前までは「トライバルラグ」という言葉は、googleの検索ワードでは限られたサイトのみしか見つけられませんでした。
しかしこの1年間SNSを中心に、たくさんのトライバルラグと称される絨毯をがweb上にアップされるようになりました。

630.IMG_1574 2
オリジナルのアンティークラグのある暮らし

ところがそれらの多くは、遊牧民が自らの生活のために織った毛織物(トライバルラグ)ではなく、有名な部族のデザインを真似て織られたものだったり、ヴィンテージと称して新しい絨毯を古く見せるために人工的に手を加えた物なども含まれているように感じます。
30年以上オリエント地域の手織り絨毯を扱ってきましたが、これまで日本では扱う側の利益を優先した絨毯しか紹介されてこなかったような気がします。
古くは巨大な中国段通、バブル期の高額なシルクのペルシャ絨毯、全国の家具店を中心に展開されたギャベとそれに続くベニワレンなどなど。。。
どれもが一時的なブームで終わったり、狭くて天井の低い都会の住環境にあまりそぐわない物だったりのような気がします。
先に触れたように現在の日本で「トライバルラグ」と呼ばれる絨毯の多くは、それらしきもので、本物のトライバルラグとは程遠いように感じます。



アフガニスタンのトライバルラグ

長い長い歴史の中で、大切にされてきた遊牧民達の毛織物である「トライバルラグ」は、先住民や遊牧民の生活に根ざした精神性の高い手仕事です。
商業目的だけではなく、家族への思いがこめられた心地良さと癒しがトライバルラグの本質です。厳しい環境を受け入れながら、しなやかに生きて来た民族の知恵と美意識の結晶でもあります。
時には野生味に溢れ、時には母のように優しい手織り絨毯に直に触れることで、日々の暮らしに風通しの良い変化をもたらしてくれるはずです。

630.IMG_1548
トライバルラグとテキスタイルの展示会

ここ数年の地球温暖化、経済格差の拡大、未知の感染症など、現在の我々を取り巻く生活環境が大きく変わろうとしています。
世界規模での感染症の広がり、仕事のIT化、少子高齢化が進む将来への不安と、早すぎる社会の変化にどう対応したら良いのか、身動きが取れない状況にも見て取れます。
今は目に見えない情報に振り回されずに、足元を見すえ、個人個人の軸足をしっかりさせることから次の時代が始まるように感じます。

トライバルラグはわずかかもしれませんが、足元からはじまる次の時代の足掛かりとなるかもしれません。

今後しばらくは初心に戻って、以下のように尽きないトライバルラグの魅力とその背景となる遊牧民の暮らしなどをわかりやすく伝えていけたらと思っています。

トライバルラグの魅力とは?

1.トライバルラグの歴史
*遊牧民の起源と生活 (羊の家畜化) 
〜遊牧民の生活道具として生まれた毛織物〜

2.トライバルラグの位置付け
*部族絨毯と商業的絨毯の違い (ジョン・トンプソン氏の考察から)

3.トライブ(部族)の分類
*3つのルーツを持つ遊牧系部族(トルコ語〜ペルシャ語〜アラブ語系など)

4.トライバルラグの機能分類
*生活の道具としてのトライバルラグ(敷物〜袋物〜掛け物〜紐など)

5.トライバルラグに籠められた願い
*文様に織り込まれた意味とは?
(世界各地の先住民の共通するトライバルモチーフの持つ意味)

6.魅力あふれる色彩の魅力
*天然染料と人口染料(植物と染めの関係)

7.女性達の手技技法の世界
*部族の女性に伝わる多様な技法(パイル、キリム、スマックなど)

8.トライバルラグの現状
*欧米でのトライバルラグ大ブームから現在の日本の状況
(ブームでは終わらないために。。。)

9.トライバルラグの未来
*グローバル化と近代化で減り続ける遊牧民
(スマートフォンがもたらす遊牧民の未来)

10.トライバルラグ関連情報
*世界の絨毯関連書籍(ウェブサイト情報も合わせて紹介)

どこまで続くかわかりませんが、展示会の少ない5月〜9月までの期間で続けて行きたいと思っております。

どうぞよろしくお願いいたします。

珍しい大型のウズベク族のメインラグ