トライバルテキスタイルとは(部族のキリムや布)

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Goods(モノ) - モノの役割

今回は、このブログでも主役として登場する「トライバルラグ(部族絨毯)」を含む「トライバルテキスタイル」について書いてみたいと思います。
例えばみなさんがアジアやアフリカ雑貨のお店、または世界各地の民族衣装などで見る鮮やかでエネルギーにあふれる布 / バッグ / 衣装 / 紐類/キリム・ラグ/袋物、その他もこの「トライバルテキスタイル」に含まれます。

「トライバルライバルテキスタイル」そもそもの役割

「トライバルテキスタイル」とは耳慣れない言葉ですが、この世の中には少数民族や先住民族の生活や儀礼に欠かせない、たくさんの布が存在しています。例えばインドネシアやインドシナ半島では布=織物は家宝として家族に代々受け継がれてゆきます。日々の生活や身の周りを飾るものとしても使用され、また嫁入りや子供の進学などの場合には換金されて生活費用の足しにもなります。

当然のように出来の良い美しい織物は価値が高く、技術とセンスの優れた布の織り手は、皆から賞賛される訳です。自分で生み出す「手仕事」が評価に直結している社会とも言えるでしょう。

かつてインドネシアの島々で「布=テキスタイル」は島の共有財産として大切に保管され、お祭りや葬祭などには先祖を迎えたり死者を遺るのに欠かせない存在となっていました。
インドシナ半島でも丁寧に織られた布を肩からかける事はフォーマルな意味があり、公の場や寺院などの参拝には必要な衣装として存在しています。

アジア各地の布
     インドシナとインドネシアの布

先祖や異界の存在を身に纏う

日本を含めたアジア各地では先祖を大切にする事は、もっとも大切な信仰として日常生活の中にも組み込まれて来ました。アジア各地の民族や部族は自分たちの先祖の存在を神話化し神格化された祖霊を大切に守り続けてきましたが、その存在を布に織り込み祭礼やハレの日に身に纏うことで先祖との繋がりを感じて来たのではないでしょうか?
神話や言い伝えに出てくる、想像上の動物(龍や鳳凰)祖霊、生命樹などの信仰の対称となるモチーフが良く登場します。
私たちも、運動会、引っ越しなどの大仕事、リレーなどの団体競技など、いざという時に身にまとう「鉢巻き」や「たすきがけ」などの所作を普通に行っています。これには布を纏う事で非日常的な力を得るという、アジアの伝統を無意識に行っているからではないでしょうか?

換金できるトライバルテキスタイル?銀行でじゅうたんが担保に

西アジア〜西南アジアは様々なテキスタイルが生まれ東西に広がった中心地ですが、古くから大切な交易品として遠く離れた地域からの珍しい品々との交換に重要な役割を果たしてきました。
シルクロードでは2500年ほど前には交易品としての絨毯の存在が確認されており、当時のユーラシア大陸を東西に移動した遊牧系民族の大切な物々交換の品物として流通していたと考えられています。
現在でもイランやアフガニスタンでは出来の良い絨毯は、バザールだけだなく、銀行などでも担保となる動産価値があると言われているのです。

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          自宅に資産としての絨毯を保管するイラン人

資産であり、部族の誇でもある布や絨毯

いにしえより価値の高い手仕事でもあったテキスタイルですが、本来は生活の道具である「用の美」として織り上げられ生活の中で使い込まれたきたモノです。西アジアの遊牧民族にとっては住空間に不可欠な敷物、壁掛け、テントベルト、クッション、枕、収納袋などと移動の際に必要な袋物や紐類などを素材から糸紡ぎ、染め、織り、仕上げまでそのほとんどが「自家製」という手作業で行われてきました。
遊牧生活は部族単位で行う事が多いため、部族内の結束力や他の部族との差異を示す必要がしばしばありました。特に部族の伝統的なモチーフ=家紋を毛織物に表現する事はとても重要視されていました。日本でも家紋から作られたモノグラムなど、非常に洗練された形で今日でも見られますね。

ただし日本と違うのは、「部族単位でのコミュニティ」がそのまま強く残り続けたため、そういったテキスタイルを形作る職人や織り手が文化の中で重視され続けていった点です。これによって同時に織り手たちはより美しく評価される文様や技術を得るための競争原理が良い方向に働き、さらに美しく洗練された文様や技が生み出されていったのではないかと思います。

部族で培われてきた手仕事には、それだけの時間と長い長い物語が宿っています。それは素朴でシンプルな在り方から生まれたり、自然への畏敬や共感などから生まれたものだったり、その発祥と発展そして伝搬の仕方も様々です。その流れをたどり、モノの背景を知る事こそがトライバルテキスタイルの醍醐味ではないでしょうか・・・。

このブログでも各回に分けて、世界各地につい最近まで続いていた美しい手仕事を地域・民族・部族・機能・環境などに分類して紹介してゆきたいと思っています。

執筆者:榊 龍昭