ほとんど知られていない絨毯とアレルギーの関係 その1

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Guide(ガイド) - 住まいと絨毯

絨毯=カーペットとアレルギーの関係は大きな誤解があり、間違った認識が30年以上も続いています。一部の皮膚科や呼吸器系の医師の間で、アレルギーがあるとカーペットを剥がしなさいというアドバイスをするそうです。確かにじゅうたんが家ダニの温床になっているという情報が、新聞や雑誌等で流された時期がありました。

誤解されてる絨毯のアレルギーの関係

現在でもアレルギー専門の皮膚科のサイトの中に、

『畳やじゅうたんは、ダニの温床になりやすいので、フローリングなどに替えましょう。カーテンは化繊のものに替えましょう。』

というコメントが掲載されています。これを読んで多くの方はああやっぱりそうか!と思われるでしょう。実際に皮膚科の問い合わせや質問にも、じゅうたんとアレルギーに関する質問が多かったりします。

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フローリングに薄手の敷物(キリム)

ある調査では、この20年間に敷き込みカーペットの部屋はそれまでの20%から0.2%まで減っているようです。新築住宅では施主の特別な注文がないかぎりほとんど無いと言ってよいでしょう。そして圧倒的に増えたのがフローリング床です。では何故ここまで敷き込みカーペットが嫌われてしまったのでしょうか?その原因と現在の新しい調査や研究をまとめて紹介して行きたいと思っています。

手織り絨毯には、もともとアレルギーの原因となるカビやダニは生息していません。
有害物資は外からは入ってくるものです。
一見清潔そうに見えるフローリングについてこれまであまり指摘されていなかった事実がわかってきました。
フローリングやビニールクロスなど硬質でツルツルの床材の場合、少しの空気の流れで細かく小さな物質は舞い上がってしまうために、掃除や歩くたびに細かいチリ、ハウスダスト、ダニなどが部屋中に舞い上がってしまっているのです。
いったん舞い上がったチリや誇りは時間をかけて下に落ちてくるため、硬質床材の表面には常に目に見えないハウスダストが落ちている事になります。逆に織物であるキリムやラグはホコリやダニの死骸を吸着し、空気中に舞い上がるのを押さえる働きがあります。
特に羊毛製のラグは表面が鱗状になっているため、微小なチリやホコリが絡み合って定着します。

中国緞通

中国緞通

大きな原因となった中国緞通の輸入と流通

カーペットが問題になった原因はいくつかあるとは思いますが、その大きな要因の一つは大型の中国緞通の流通にあったのではないでしょうか?

1972年、時の首相であった田中角栄氏は第2次大戦後ほとんど交流の無かった、中国を訪問し周恩来首相と日中国交正常化を行いました。この後日本は国交正常化の両国民間交流を進めるわけですが、其の政策の一つとして中国からの輸入品の拡大があったと考えられます。もちろん進んでいた日本の技術や産業を輸出する工業製品と交換(バーター取引)として必要性があってのことだったと思います。

当時世界でも最も人件費の安かった中国は、主に世界の経済をリードしていたアメリカ向けに大型で分厚い手織り絨毯を作成していました。工場は貿易港に近い天津です。
間もなく日本にも天津製の『緞通(だんつう)』というアメリカ向けに作られた一枚100キロもある大型手織り絨毯の輸入が始まりました。政府の後押しもあり、全国各地のデパート、大型家具点、じゅうたん・カーテン販売店などあらゆる店舗にて緞通を売り込むプロジェクトがスタートします。
時は高度経済成長時代、立役者田中角栄氏の日本列島改造論とともに、ブルドーザーのような勢いで日本中に天津緞通が広まりました。ただ勢いが急すぎたのか、販売する側には羊毛製の手織り絨毯の情報がほとんどありませんでした。
それまでに国内には存在しない商品は高額でも比べるものが無く、売り上げの上がる目玉商品として業者が飛びつき、その勢いはとどまる事がなかったようです。地方のお金持ちのお茶の間には、右へならえとばかりに、厚くて重い天津緞通が広まって行きました。この緞通が後に大きな問題を引き起こす事になってしまったようです。

販売する側に情報の欠如が!

手織り絨毯自体は悪いものではなかったのですが、敷いた部屋が畳敷きの和室で、6畳敷きや8畳敷きなど、部屋の端から端まで目一杯に敷かれたようです。
畳は本来呼吸するもので、湿気調整が可能な優秀な室内装飾品です。ただその上に分厚い羊毛の緞通が敷かれると呼吸困難になってしまいます。重い緞通は一度敷かれてしまうと中々動かすことが難しいものなのです。もしお宅に大型の絨毯をお持ちの方は身に覚えがあるかもしれませんが、女性一人で絨毯を干したり移動したりするのは大変ですよね。当時の富裕層に広まった緞通を始めとする絨毯も、何年も敷きっぱなしにされたのではないでしょうか?
畳と緞通の間は湿気がたまり、カビやハウスダストの温床になっていきました。初めての大型羊毛製品だったこともあり、販売する側に手織り絨毯に関する知識や情報がなかったのです。
大型の厚みのある羊毛絨毯を洗える様なクリーング工場はもちろん、羊毛じゅうたんのメンテナンス情報はほとんど無かった時代でした。

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いくつもの悪条件が重なり、中国緞通は、カビの温床~アレルギーを引き起こす原因のひとつという悪者になっていきました。
絨毯自体にカビやダニなどが付いているわけではありません。使い方によって問題が発生してしまうのです。

このブログでも、正しい使い方羊毛の性質についての情報を繰り返し紹介してゆきたいと思います。

執筆者:榊 龍昭