日本人の「パッチワーク好き」と「ラルフローレンの絨毯」

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Infomation(コト) - コラムその他

トレンドになってきた?キリムラグ

日本でもここ数年キリムやギャッベなどの毛織物がインテリアとして紹介されるようになってきました。職業柄、床にばかり目がいってしまうのですが、テレビのCMやドラマや映画のシーンなどにも気の利いたラグやクッションカバーなどがたくさん登場するようになりました。
また、青山や代官山などのセレクトショップや洒落たカフェの床や壁の装飾としてセンスの良い敷物を目にすることも多くなってきています。

しかしそれらの敷物がどこで誰が織ったものかについては、ほとんど知られていないように思えます。知る必要が無いと言ってしまえばそれまでですが、もしさりげなくそれらの敷物の産地、年代、特徴などを知っていたら『えっ!この人はこんな事に詳しいんだ?』などとそこから会話が弾むかもしれません。

数十枚のラグに覆い尽くされた、ラルフローレンのショールーム

東京近郊では原宿にあるラルフ・ローレン表参道店のメインフロアーの絨毯など、圧倒的な存在感があります。フロアーの面積が大きいので、一枚ものの絨毯では敷ききれなかったのか小さめのラグを何十枚も繋いだパッチワークスタイルになっています。
実際はトルクメン族のアンティークラグやバルーチ族のオールドラグ、イラン各地の村々で織られた味わい深い絨毯が何十枚も繋ぎ合わされた構成になっています。一見ちぐはぐなようですが、さすがに全体としては同じようなトーンでまとまっています。

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 オールドラグを繋ぎ合わせたパッチワークラグ

このあたりのこだわりが、半世紀近くも常にトップブランドとして成功を納めてきたラルフ・ローレンのビジネスセンスなのでしょうか?今ではストーリーを生み出し歴史を作ろうとしているようにも見受けられます。
フロア面積が大きすぎるというお店の事情でパッチワークになったのか、最初から意識してパッチワークにしたのかは、店舗装飾のデコレーターに聞いてみたいところです。ただし、この絨毯の存在が表参道や青山周辺のお店やセンスある人達に様々な影響を与えているようなのです。今回はこのパッチワーク絨毯と日本人の感性にスポットを当ててみたいと思います。

日本人の好みに合ったパッチワークキルト

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Daily yummy パッチワーク教室のキルト作品

日本ではアートテキスタイルの評価が低すぎると常々感じているのですが、「パッチワークキルト」という分野だけは別格です。
キリムという言葉も「ああキルトですね。」と間違われることも多いのですが、キルトとはヨーロッパに伝わったアジア各地の布の切れ端をベッドカバーなどに再利用していたものが、アメリカに伝わり様式化されたものと言われています。
その歴史やオリジンはあまり良く知られていないようですが、この切れ端布を繋ぎ合わせた「パッチワークキルト」は日本では何故か大ブレイクし世界の「パッチワークキルト」界?を圧等的にリードしています。
膝の上で手軽に出来る針仕事と、古い布を大切に再利用(先織り、襤褸=BOROボロ)してきた東北などの手仕事の伝統がある日本の土壌に巧く溶け込んだとはいえ、毎年東京ドームで数万人を集めて行う東京国際キルトフェスティバルなどは、NHKテレビが毎年何時間にわたって放映し、入場者数も何万人に達するというビックイベントになっています。

世界的には比較的マイナーなキルトにこれだけ脚光があたるのは珍しい現象と言えるでしょう。このところBOROというネーミングで藍染めの古切れを張り合わせた布が注目を集めています。まさに着古してぼろぼろになった着物や布がアートとして注目されています。
青森出身で膨大な古布や古民具を収集した田中忠三郎氏のコレクションを展示する美術館なども浅草にオープンし話題になっています。

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 浅草にあるBOROを展示したアミューズ美術館

セレクトショップにトライバルラグ

ラルフローレンがこの辺りの事情を知っていたとしたら、それはそれで素晴らしいマーケティング手腕ですが、世界的にはあまり目にする事のない、あえてパッチワーク風にしたラグやキリムの敷物が、表参道や青山周辺のカフェやショップに多いのも、極めて日本的な現象かもしれません(ただその場合一つ一つのパーツがあまりにも小さいと、絨毯本来の産地や部族を知るといったことはむずかしくなってしまうかもしれませんが・・・)。
実際に多くのアパレル関係のショップが、この原宿店の絨毯を見て同じく自分の店にもトライバルラグを取り入れたーそういった経緯が多いようなのです。

そういったところもあって、現在国内では割と多くの分野で「トライバルラグ?あ、キリムのことか。キリム=キルト → パッチワーク」といった認識が広まっているのを目にします。
今後、もっと正しい認識を踏まえた上でたくさんの方がトライバルラグの魅力を知っていけるよう、このブログでも微力ながらお手伝いをしていけたらと思います。

執筆者:榊 龍昭