「織りの構造から見るトライバルラグ 2.」パイルの構造とは?

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Goods(モノ) - テキスタイルの仕組み

谷中の展示会も盛況のうちに終了しました。熱心なお客様や織り物の先生たちと「トライバルラグ」について色々な話をすることができました。
今回は『織りの構造』を切り口にした展示を行いましたが、テーマを決めて展示することで、いつもとは少し違った展示会となりました。キリムジジムスマック、パイルなどを技法ごとに飾りましたが、日本ではほとんど知られていないトライバルラグ特有の多様な織りの世界を見ていただき、遊牧民の毛織物の素晴しさを知るきっかけになればと思います。

5.織りの構造パイル
織りの構造 パイル

部族の毛織物の技法2. 絨毯=結び(ノッテッドパイル)

結び目のある構造は、一般的なペルシア絨毯やトルコ絨毯などとして知られる、毛足のある「絨毯」全般に広く用いられています。しかし部族の織り手たちは、テント内の敷物、サドルバッグや袋物、動物の飾り、クッション、扉飾り、テントベルトなどの生活の道具にも、このノッティド・パイル(結び技法)を用いてきました。
西イランの遊牧民ルル/バフティヤリー族の大型のサドルバックは、表面がスマック織り(平織り)、底の部分だけがパイル、裏面は平織りと、幾つかの技法が組み合わされています。
負荷の大きい底の部分にノッティド・パイル(結び技法)が使われるのは、頑丈で破れにくいというパイルの強度をうまく利用していると考えられます。広げて見ると現代アートのようで、デザインのために織りの技法を変えているように思われるかもしれません。

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バフティヤリー族のサドルバックの底に使われるパイル

トルコ結び=ギョルデスノット(対照結び)

13.トルコ結び(対象ノット)
トルコ=ギョルデス=対称結び

タテ糸に結ぶパイル(起毛状の糸)の絡め方が対称なものを、ギョルデスノット(トルコ結び)と呼んでいます。ギョルデスはトルコ東部の古い町で、祈祷用のミフラーブデザインの絨毯が有名です。ペルシア絨毯などはノット数(結び目の数)で絨毯の価値が決まると言われますが、トライバルラグの場合はノット数と絨毯の価値とはあまり関係がないようです。
ノット数の細かさでは、トルコ西部のヘレケ産のシルク絨毯が有名です。1cm四方に24×24=576ノット(例えばたたみ一畳だと9,331,200ノット???)という人間業ではないような緻密なトルコ結びのものがあるそうです。ここまで細かくするのは、「用」としての絨毯というよりは、プライドのための絨毯のような気がしてきます。
イランのタブリーズやナインなどの産業用絨毯産地では、カギ針による対照結びが行なわれいて、まるで写真のような絵画や精密なお札などをそのまま絨毯で表現しています。

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伝統の絹産地ブルサ産のシルクを使ったヘレケ絨毯

トルコ結びは、クルド族やカシュガイ族などの遊牧民にも使われますが、タテ糸が重なるものと(デプレスの利いた*)並列に並んでいる形が見られます。左右対称なので、かっちりとした印象をうける結び方とも言えるでしょう。

ペルシア結び=セネノット  (非対称結び)

15.ペルシア結び(非対称右開き)
ペルシア=セネ=非対称結び(右開き)

縦糸に結ぶパイル(起毛じょうの糸)の絡め方が非対称なものをペルシア(セネ)ノットと呼んでいます。

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イラン西部クルド人の多くクラスサナンダジ(セネ)の絨毯

セネとはイラン北西部の毛織物の盛んな町で現在はサナンダジと言う名前に代わってています。古い時代の呼び名が「セネ」で現在はクルド族が多く定住している歴史のある町です。最近では絨毯よりも細かい曲線表現の綴れ織りキリムのほうが有名かもしれませんが、深い藍色と赤のコンビが美しい由緒ある伝統的な絨毯も織られています。

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曲線を綴れ織りで表現しようとしているセネキリム

多くの都市工房のペルシア絨毯や最近のトルクメン絨毯インドのムガール絨毯などがこの技法で織られています。

セネノット
セネノットの開きの違い

右開きの非対称結びと左開きの非対称結びがありますが、多くの都市工房のペルシア絨毯は左開きが使用され、絨毯の文化発祥にも関わりの深いと云われるトルクメン族は右開きで結ばれています。ちなみに右利きの人にとってはペルシア結びの左開きが最も早く結べるということです。部族絨毯では、バルーチ族や多くのペルシア語系の遊牧民はこのセネノットを使っています。また、多くはありませんが一枚の絨毯に両方の技法が使われることがあります。一部のトルクメン絨毯には、全体がペルシア結びなのに両脇1cmぐらいにだけトルコ結びが使われているものがありました。ちなみに,日本の迎賓館で使われた特注の手織り絨毯がこれと同じ端だけ対照結びという話をきいたことがあります。もしかしたらトルクメン絨毯をそっくり真似たのかもしれません。

トルコ結びとペルシア結びはどちらが優れている?

どちらが良いということはありませんが、産地や部族を見分けるのには役立ちます。
新しく細かい結びの絨毯は、表面からみても結びの違いは解りませんが、表面を縦方向や横方向などに山折りにしてみると違いがわかりやすく、パイルが減ったアンティーク絨毯は、結び糸が磨耗しているので表面からでも簡単に見分けることが出来たりします。

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100年を超えたアンティークラグのパイル部分(表面からも結び目が見える状態)
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糸の撚りの種類

また、縦糸に木綿の糸あるいは絹糸が使われる絨毯がありますが、その多くは産業用に織られたものが多く、堅ろう度からいえば羊毛よりも強く糸の滑りも良いので、織りやすい素材です。また最高級ペルシア絨毯(イスファハンやゴム産)にはタテ糸に絹糸が使われているものがありますが、緻密な絨毯を織るのい適していると思われます。実はトルコ結びとペルシア結びの違いを知るには絨毯の表面には出てこないヨコ糸が重要な役割をしています。
ヨコ糸については、次回にじっくりと解説したいと思っていますが、絨毯屋用語でシングルノットとダブルノットという分類がありますが、この分類にはヨコ糸が深く関わっています。とても紛らわしく、混乱しやすいのであまり使わないほうが良いと思いますが何故か、手織り絨毯を販売する業者では広く語られています。

*デプレス(絨毯用語としては、主にタテ糸の重なり具合を表す。ペルシア絨毯に代表される緻密な絨毯は結び糸が垂直方向に重なり強度を出している。その重なり具合の角度が大きい程デプレスが利いてる。部族絨毯などは並列に並んでいるものも多くれをシングルノットと呼ぶこともある。)

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執筆者:T.Sakaki