Ignazio Vokコレクション(ドイツRippon Boswell&Co.のオークション)vol.2

スクリーンショット 2020-07-13 16.44.23

Infomation(コト) - テキスタイルニュース

2015年〜2017年にRippon Boswell&amp:Co.という歴史あるドイツのオークションハウスで3回に渡って行われた、Dr.Ignazio Vokコレクション紹介の2回目です。
ここしばらくトライバルラグとあまり関係ない記事も続いたので反省しています。
今回はコレクションがあまりにも素晴らしいので写真が中心です。
どれも大好きなのモノばかりで選ぶのに迷いましたが、今回はキリムを中心に次回はスザニを紹介します。

Dr.Ignazio Vokのプロフィール

Vok.collectionは、1938年にスロベニアのリュブリャナで生まれ、ミュンヘンとヴェネツィアで建築を学んだDr.Ignazio Vokが収集した物です。
Dr.Ignazio Vokは大学時代からヨーロッパの古今東西の美術を研究、その後、アジア、イスラム、アフリカの文化にも興味を持つようになりました。
1974年からはアナトリアとイランのキリムとウズベクのスザニを収集し始めました。
キリムやスザニの他にイタリア・ルネッサンス時代の小さなブロンズ彫刻、アフリカのプリミティブアート、現代日本の墨絵、中国の明時代の家具、ガラス、漆工芸品など、古今東西の工芸品にも興味を持ち収集を重ねました。

1---Ignazio-Vok-und-Detlef-Maltzahn
Rippon Boswell&co.の記念オークション 左側がIgnazio Vok氏

かなり若い頃から収集を始め、原則として最高品質のものだけを手に入れるようにしてたようで、ここ50年のキリム&スザニコレクションはずば抜けています。
2005年パドヴァ美術館で展示(イタリア・ルネッサンス期の小判型ブロンズ)、1983年から1984年にかけてケルンのオスタシアティッシェ美術館とチューリッヒのリートベルク美術館(中国の陶磁器)、2004年から2005年にかけてケルンのオスタシアティッシェ美術博物館(明時代の中国家具)に彼のコレクションは展示されました。また、日本のガラスと陶磁器、現代書道のコレクションも所有しています。

kilim kashu1
左#160ルル族、右#174 ルルもしくはカシュガイ族産地不明のプリミティブなキリム

遊牧民のキリムとウズベクスザニのコレクション

中でも遊牧民のキリムと中央アジアのテキスタイルの収集の評価が高く、この分野では現代の最も偉大なコレクターの一人とされています。
建築家として成功していた彼は、三次元と二次元の空間における形、構造、プロポーション、色、構図、そして美学と機能の相互作用についての確かなセンスを持っています。
コレクションは美術批評家の評価に耐え、自分の心に深く響くもの、つまり、芸術的なメッセージ性を持った、自分を魅了するものだけを手に入れることに専念していたようです。
建築家として立体的に考え、慎重に計画を立てることに慣れていた彼は、コレクターの狩猟本能に導かれて、最高の作品を手に入れるためには、同時代を代表するギャラリーのオーナーとの関係を築く必要があることに気づき、それを実践していたようです。
このようにして、彼のテキスタイル・コレクションは、まず美術商による選定、そして自分自身による選定という二重の評価を受けてさらに評価を高めました。

kilim 1
左#20アナトリアのバルケシール、右#13イランのシャーセバン族の洗練されたキリム

Dr.Ignazio Vokのコレクターとしての本能はまさにハンターのようで、直感でモノを選んでいた事が伝えられたいます。これは民芸運動の柳宗悦氏がモノを見るときに最も大事にしていた「無の境地で観る」ことに重なります。
1970年代というまだオリジナルの古い物が現地に、残っていたギリギリの時代に収集が成された事は羨ましい限りです。
もちろんドイツを中心に欧州で、オリエントの絨毯や中央アジアのスザニなどの評価が高まり、流通していた良き時代でもあります。

jijimcut3 1
左#181イラン中部カラジェのキリム、右#263アゼルバイジャンのヴェルネと呼ばれるジジム

欧米人に見られるコレクター気質

Dr.Ignazio Vokは一流の専門家との密接な個人的な関係、コレクターの友人たちとの活発な情報交換により、この高度に専門化された収集分野にいち早く精通し、短期間でその本質を把握することができたようです。
彼は昔からの個人主義者で、時代の流れではなく、自分の内なる価値観を頼りに自分の衝動に従ってきました。
購入の決定は、常に直感、個人的な好み、そして自発性によって導かれていました。
また彼は決して包括的なコレクションを作ろうとは考えておらず、民族学的、歴史的な側面にはほんのわずかしか興味を持っていなかったようです。
彼にとって重要なのは、美術品の美しさと、それが彼に何を語りかけるかです。
出版物の序章では、彼のアプローチが主観的なものであることを自信を持って強調しています。

jijim cut 1
左#8ダゲスタンのアヴァール、右#266シャーセバン族の縫い取り織(ジジム)

同時にDr.Ignazio Vokの出版物には、3人の著者によるオブジェの議論に加えて、彼の個人的なコメント(知的なものだけでなく、感情的なものも含む)が掲載されています。
スザニス、キリム、平織は、その違いにもかかわらず、強い視覚的表現と独特の性格を共有しています。
そこには、構造物、間取り、建築計画、空間の分割、土地利用などを扱う建築家のビジョンと思考が反映されており、一方では装飾品の主要なテーマと装飾的なデザイン要素としての機能を研究しています。

kuba2 2
左#91コーカサスのクバキリム、右#220イランカシュガイ族のキリム

年齢と子供たちが他のことに興味を持つようになったため、Vok氏は彼のテキスタイルコレクションを他の愛好家に購入してもらうことにしたそうです。
そのため美術館や個人コレクターからのコレクション全体やアイテムをまとめての購入の申し出は断ったそうです。
Vok氏の希望は、様々な国から、それぞれに歴史を持ち、彼に多くの喜びを与えてきた彼の素晴らしいテキスタイルの傑作が、世界中に再配布される必要があると考えているそうです。
すべてのコレクターに平等に購入の機会を与えるために、彼はパブリック・オークションの道を選んだということです。

*今回の内容の多くはドイツのオークションハウスRippon Boswell社で3回に渡って行われたThe Vok Collection からの引用です。

参考サイト:Rippon Boswell&Co. Dr.Ignazio Vok collection

当時の落札価格です。(1€=¥130)

#160 Rurukilim €24,400 =¥3,172,000 / #174 Qasguqai €20,740=¥2,696,200
#20 Barikeshir €26,840 =¥3,489,200/ #13 shahsevan €10,980 =¥1,427,400
#181 Karaji €6,765 =¥879,459/ #263 Azerbijan €8,610 =¥879,450
#8 Avar €10,980 =¥1,427,400/ #266 shahsevan €16,605 =¥2,158,650
#91 Kuba €14,640 =¥1,903,200/ #220 Qasguqai €5,289 =¥687,570

関連サイト:tribe-log.com 「最初で最後かもしれないキリム&スザニコレクションがすごすぎるドイツのオークション!」

執筆者:T.Sakaki