ノマドという幻想2.(リモートワークの現実) コロナ禍の中で社会を考えるvol5.

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Infomation(コト) - コラムその他

数年前に書き始めてそのままになっていた文章がありました。
現代社会における「ノマドワーカー」という新しい生き方について、本物の遊牧民(ノマド)との比較をしようとした時のものです。
今回のコロナ禍で圧倒的に増えた社会現象のひとつは、リモートワークではないでしょうか?
働き方や雇用について多くの著書のある常見陽平氏の文章を引用した内容ですが、コロナ後の社会に役立つ内容も含まれているので、現在と比較して紹介してみようと思います。前回のブログの「小商のすすめ」と重なる部分もあるので、その辺りも考察していただけたらと思います。

地方移住へのすすめ。

以前のブログ「ノマド=自由という幻想」を書いた頃は、まだまだ首都圏を離れて仕事を行うことが想像できにくかったと思います。なんだかんだ言っても組織にいる以上は出社しなければいけない。
また個人事業者でも打ち合わせなど、会社や外の商業施設などへ出かけて業務を行うことが当たり前と考えられていました。
ここ数ヶ月の社会の劇的な変化によって首都圏以外に住んでいても、リモートワークによってある程度の業務は可能になってきています。
時々は出社する必要があるかもしれませんが、その回数はコロナ禍以前に比べるとかなり減ったと思われます。

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ノマドワーカーに欠かせない洒落たカフェとapple?

これまで地方への転勤や移住は、地方の会社で仕事をするという発想でしたが、コロナ禍後は地方に住んでいながら都会の会社で仕事をするという発想です。
今までは地方の会社に勤めるか、関わる仕事をするという発想だったので、都会と地方の会社では賃金にもそれなりの格差があったと思います。
仮に都会を離ても毎日の通勤や移動に多くの時間とコストが必要でしたが、リモートワークが可能であれば大きな時間的余裕ができます。
すでにニューヨークのエクゼクティブ達はマンハッタンの高層住宅を離て、郊外の人口密度の少ない自然環境の良い地域への移住が始まっているようです。

ただ日本の地方の場合には農村型の閉鎖性もありますので、地域社会との人間関係は個人の意識や人間性と大きく関係してきます。
その辺りのコミニュケーション能力は、地方で暮らすのには大事な部分と思います。
今後の課題の一つは、地方の人達と共同で新しいコミニティの仕組みをどのように構築していくのか、ということになると思います。
地方の共同体の枠を超えて人をつないでいく都市型コミュニティを、いかにこれまで続いていた閉鎖性のある農村型コミュニティに融合させていくことが非常に重要になってくるのではないでしょうか。
ここ数年、地方の小規模な町では若者の人口流出と少子化で、人口減少が急速に進んでいます。会社への帰属意識が強く、会社中心の生活で自由な時間もなかったので、地元との交流出来にくかったとも言えるでしょう。
何度か紹介している広井良典氏が中心に行っている、鎮守の森などを「場」として相互が交流できるコミニティや、昔からの地元の「祭り」の体験を共有することで新しいコミニティを創造するきっかけになりえると思います。

空いた時間を好きに費やす。

音楽、料理、旅、読書、スポーツ、映画、手仕事、最近では菜園などなど好きなことを仕事にできたら何よりですが、現実はそれほど簡単には行かないようです。
これまでの都会での仕事は、会社への拘束時間があまりにも長く、朝から夜遅くまで通勤時間も含めるとそうとな時間を費やしてきたと思われます。
毎日出社しないことで、これまでと比べると自由な時間が増えていると実感している方も多いと思います。
海外のあるデータではこの3ヶ月で睡眠時間が大幅に増えて、身体的に健常になったと感じている人がある程度の割合で増えているそうです。
経済的な厳しい状況が続く中では、前向きな話題です。

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風のように暮らす遊牧民

空いた時間を好きなことに費やすことで、さらに満足感は増えると思います。
もしも得意分野があれば地方の共同体などでその趣味や特技をしかしたコミニティを作り、地元や都会から移住してきた人と情報をシェアしたりそこから生まれたものを「小商」につなげることも可能になると思います。
もちろんそれまでにSNSなどで築いたコミニティをリモートで発信することにも生かせるでしょう。
地方には使われることを待っているような、広々したスペースがまだまだ存在しています。
covid-19のワクチンや治療薬が開発された頃には、年に一度くらいは日本中からリアルに集まれるツアーやイベントの企画なども地方ならではのスタイルでで、可能になっていくことでしょう。
それには地域の活性化を快く思う地元の人達との交流や、できれば地方の行政や大学や教育機関のサポートがあればさらに実現が近くなると思われます。

若者達が集う地方創生の場 (誰もが楽しい手仕事村構想)

話は飛びますが長野県の蓼科に女神湖という湖があります。
横浜に住んでいた学生時代の友人が、スキーをしに行って地元のスキー学校のインストラクターと結婚してその地に何十年も住んでいます。

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夏の女神湖

共通の友人の紹介で、結婚式を挙げた地元の立派なホテルで展示会を行ったこともありました。
いくつかの「縁」が重なり何度か通ったのですが、名前の通り女神が住んでいるような信じられないほど美しい場所です。
近くには蓼科山が聳え、霧ヶ峰高原など春から秋までは清々しい空気で、年々熱帯化する東京の夏を思うと天国のような場所です。
近隣には縄文時代に祭祈場のような遺跡も多く、そもそも女神湖の名前は、近くの茅野周辺で見つかった国宝に指定されている縄文時代の土偶のひとつ、縄文のヴィーナス(女神)に由来しているようです。
とにかくスピリチュアルな場所です。
しばらく滞在したこともありますが、ここで見る夢は鮮明でファンタジック、時間が経っても忘れられない覚醒的な夢だったことが、強く印象に残っています。
そこに住む友人が10年ほど前から、「女神湖妖精祭」というイベントを企画しています。

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年に一度行われたていた女神湖妖精祭

湖の辺りは何故か立派な野外劇場が建っていて、周辺のペンションやホテルを会場に妖精に関するイベントを開催しています。
第一回目にバローチ研究者の村山氏と参加したのですが、生憎台風が接近していました。行きは中央高速道路が通行止めで国道から行ったのですが、湖は深い霧の中に覆われて本当に妖精が現れそうな妖しい世界でした。
その夜は妖精学の世界的研究者でケルト文学に詳しい、井村君江先生のお話会がありました。内容はシェークスピアの「真夏の夜の夢」やケルト文化が発祥と言われる、ハロウェイーンの話などとても興味深い内容でした。
余談ですが、ハロウィーンに登場するお決まりの野菜カボチャですが、もともとはカブだったそうです。ケルト文化を色濃く残すアイリッシュの人達がアメリカへ移住する際に大西洋を横断する長い船旅で、カブは船内で腐ってしまうことが多かったそうで、移動中の食糧にもなり保存性の高いカボチャへと変化したらしいです。

好きな世界をベースに集まるコミニティ作り

話が相当脱線しましたが、この女神湖周辺では1980年代にペンションとして人気のあった素敵な家屋が、空き家になっているケースが多くなっているそうです。
女神湖でなくても同じように素晴らしい自然環境と空きスペースを持つ、かつての人気の観光地は日本全国にたくさん存在していると思います。
隠れ家的な観光地も一時的にインバウンドで海外の観光客が増えつつありましたが、またしばらくはコロナ禍の影響で、厳しい状況が続くことが予測されます。
一年中でなくでも季節の良い時に、このような自然環境の良い場所へ移住して、生活を送ることは可能になっていると思います。
もちろん家族であれば子育てには最高の環境です。
これは個人的な夢のようなの話ですが、こういう場所で手仕事を輸入したり、創作したりしながら「小商」を行う人達が、共同でコミニティーを創設できたらと妄想しています。
気の合う仲間で小さなモールの開設や年に数回はリアルなイベントも行い、通常はオンラインによる販売で生計を立てることは、それほど難しくないと思います。
野菜やお米などは地元の人達との協力で自ら作ることも楽しみになりそうです。もちろん好きな世界は音楽だったり、工芸だったり、マニアックな趣味や研究だったりとジャンルは広がります。
上で紹介した女神湖は「妖精」というテーマで、それに関連する様々なイベントを行いました。今の時代は情報の発信を丁寧に行えば、日本各地から同じ趣味を持つ人達が集う場になり得るでしょう。
ゆくゆくは妖精の本場であるアイルランドや北欧などの国々とも交流ができるかもれないなどと、想像しているだけで楽しくなります。

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宇宙的センスを持つシャーセバン族

前回紹介した「ノマドという幻想」では常見氏が「地方で働く」ことの難しさについて、いくつかの疑問を呈していました。

●「都会でやっていけない人は、地方でやっていけない」ーその理由として地方には自由が少ないことを挙げています。
(地方は移動や情報など、あらゆる面で非効率ですし、物価が安いかもしれないけど賃金も安い。なにより人間関係が狭い。地方出身の人は分かると思うんですが、村社会での狭い人間関係は、自由とは程遠いと思うんです。
さらに、仕事も一からつくらなきゃいけないという場合もあります。自由を求めて会社を辞めて地方に行っても、現実は結構厳しいのです。)

今回のコロナ禍で起こったことは、地方で仕事を一から作るのではなく、今の仕事をそのままリモートなどで地方で行うという変化でした。
またある程度まとまった人達が地方へ移住することで、元々の地元の人達も地域の活性化を含め、ある程度受け入れる要素が生まれるつつあるのではないかと思います。
観光産業の減収や外国人の労働力が見込めないため、季節的な農作業の人手の減少もしばらくは続くと予想されます。今だからこそ他の地域からの人の流入は受け入れやすくなっていると考えられます。
リモート作業などのデスクワークと農作業のアルバイトなどをバランス良く取り入れることは、ストレス解消にも、また新鮮な農産物を自らの労働から得られる喜びも得られることでしょう。
そのあたりの仕組みは、NGO的な組織による持続可能な相互交流の仕組みを創造することが大切であり、そこが肝心な部分になると思われるので、人手不足に悩む、地方の役場、公共機関、大学などとの連携も重要かと思います。

長くなりましたが、既に様々なプロジェクトもスタートしています。その動きにも注目していきたいと思っています。

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自然・コミニティ・個人の関係性

引用写真および資料:トイ人 「日本社会はどう変わるべきか」 広井 良典氏のインタヴュー 【後編】から

参考資料:鎮守の森コミニティ 代表 広井良典

参考サイト:「小商のすすめ」~コロナ禍の中で経済を動かすには~vol4. tribe-log.com
コロナ禍の中で経済を動かすには!持続可能な社会 その3 tribe-log.com
止まった資本主義? (自然の中の人間)アフターコロナを考える2. tribe-log.com
アフターコロナをどう考えるか? vol.1 tribe-log.com

執筆者:T.Sakaki