民族を彩る赤色の手仕事展 「Folklore in Red vol.2」

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Goods(モノ) - 色について

かなり昔、新宿のクリスタルスポットという西口高層ビル群のど真ん中にあったギャラリーで「部族の赤い世界」という展示を企画しました。
今ではもう慣れてしまった風景ですが、そこには無機質で巨大なコンクリート塊が怖いような、近未来な雰囲気がありました。
過剰な人工都市的背景に、部族の濃い「赤い世界」が良く似合っていたように感じていました。

あれから20数年経つでしょうか?場所は変りましたが、民俗の赤はどこに移っても、暖かく、居心地の良い居場所を用意してくれるようです。

12月28日(木)迄 (最終日は18:00)

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昨年末、大好評を博した東京・谷中の3店舗「ザ・エスノースギャラリー」、「東欧民芸クリコ」、「アトリエ・サジ」と「部族の絨毯と布 triBe」、「OKKO YOKKO」の合同企画「Folklore in Red」を行ないます。
東欧の手刺繍、モロッコの飾りボタンのアクセサリー、ウクライナの赤い薔薇のドレス、トライバルラグ、イランの手編靴下・・・。
各地の民族に古くから愛されてきた赤色。火や情熱、華やぎや魔除けを意味するモノとして作られた様々な赤を集めて、期間限定ショップをオープン致します。寒い冬を彩る赤色の贈り物を探しにいらして下さい。

<参加者>
アトリエサジ AtelierSAJI: http://atelier-saji.com
東欧民芸 クリコ:東欧民芸クリコ FACEBOOK
部族の絨毯と布 triBe:www.tribe-log.com/
OKKO YOKKO: www.okkoyokko.com/

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世界の赤い手仕事

部族の赤い世界

石器時代から人々の生活の中で生きてきた『赤の色』は、世界各地の先住民族や少数部族にとって祭や儀礼などのハレの日には欠くことの出来ない色として受け継がれてきました。

太陽・火・血・花・果実・土などの赤は、時として様々な思いを人々の心に刻み込んできたのではないでしょうか?
ステップの大草原に訪れる一瞬の春に咲く赤い芥子の花、サバンナの乾いた大地にゆっくり落ちる夕日、湿原の北限ブナ林を彩る紅葉、ツンドラの過酷な凍土に焚かれる火、そして深い森の中に忽然と表れる赤い茸、、、。

自然界の「赤」は逞しく生きる力の源として、あるいは「魔」を追い払う呪術的な色として、深く民俗の中に息づいてきたようです。

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部族の赤い世界

赤を巡るフォークロア

もうすぐクリスマスやって来ますが、皆の大好きなサンタクロースも赤い帽子に赤い外套を来てクリスマスイブの夜に訪れます。
あまり知られていませんが、もともとは3世紀末の小アジアに生まれ、長じてミュラ(現在のトルコ)の司教となった聖ニコラウス。その話が北欧に伝わり、トナカイに引かれることになったそうです。もしかしたら乗り物はラクダやラバだったかもしれません。
赤い服も元々司教の赤紫の祭服であったそうです。

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クリスマスといえば靴下

旧約聖書にも、神(ヤハウェ)はモーゼに幕屋の建設のおり、赤く染めた雄羊の毛皮=聖なる祭服とあり、モーゼの時代から「赤い毛色」は神聖な色であったようです。こうした赤い服、赤い色の織り物は呪術的な世界観に満ちています。

草原の赤い絨毯

ユーラシアの騎馬民族達にとっても赤い色は欠かせない色だったようです。『白・黒・赤』の三色は特に象徴的な色で、冠婚葬祭には赤の色はとても重要な意味を持ちます。中央アジアを中心に強い勢力を保持してきたトルコ系部族は、絨毯、刺繍布(スザニ)・絣(アドラス)・フェルト・金属加工等の手仕事にこれでもかという程の赤い色を用いてきました。なかでもトルクメン族は最も赤の持つ呪力を信じてきた人々といえるでしょう。サラブレッドの原種ともいわれているアハル・テケ(汗血馬)を有する行動範囲は圧倒的で、東西南北に縦横無尽に移動してきた人々です。

草原をテリトリーに移動生活を営んできた彼らはドーム型のテントが主な住居ですが、その内側は洗練された文様と深い「赤」に彩られた美しい絨毯で飾られています。雨が少なく昼夜の温度差が激しい大陸性気候の中で、一瞬の春に咲き乱れる真っ赤なケシの花畑のイメージを取り込んだような赤い世界は、彼らの美の結晶です。
欧米の絨毯愛好家達は、騎馬民族の雄トルクメン族を「ノーブル・サベージ」=優雅なる野生人と称しています。

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トルクメンの赤い工芸品

民俗に愛される赤い色

トルクメン族に限らず、世界各地の民族の織り物や刺繍、アクセサリー、民族衣装、靴下や靴までの装飾品に赤い色を使ってきましたが、その各々を取り巻く自然環境により様々な赤が愛用されています。例えば、遊牧民達が好む乾いた砂漠に映える鮮やかで深い赤、日本やインドネシアなど高温多湿の島国では、はんなりとした赤や淡い赤が好まれるようです。また標高の高いチベット高原やアンデス山脈の高地に住む人々は覚醒した、抜けるような色彩を好むようです。それは同時にそれぞれの環境に応じた自然界の植物や虫、鉱物などとも深く係わり合っています。植物ではアカネ、スオウ、紅花など、またコチニール、ラック、ケルメスなどの虫、酸化鉄などの鉱物などが良く使われてきたようです。

天然染料に使われる植物や虫は染料だけではなく、漢方薬などの薬草としても珍重され、古代人の生活の中に脈々と受け継がれてきたのではないでしょうか? (つづく)

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中央アジアを代表するトルクメンとウズベク族

執筆者:T.Sakaki