コロナ禍の中で経済を動かすには!持続可能な社会 その3

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Infomation(コト) - コラムその他

まだまだ油断はできませんが、日本では新型コロナウィルスとの付きあい方も少しづつ変化してきているように思います。
南米やアフリカなどの状況を見ると、この影響が今後どうなるのかは未だに予測がつきません。ただ、自分自身も含め少しは落ちつて考える余裕ができてきたように思います。今回のコロナ禍は多くの人達がこれまでとは違う角度から、新しい生き方を見つめ直すきっかけになっているのではないかと感じています。

前回はコロナ禍がもたらした「自然と人間」との関わりの変化に注目しましたが、冷静になってくるとやはり気になるのは生活に直結する経済です。
コロナ禍が私たちに突きつけたのは、「命」と「暮らし」のどちらを大事にするのかの選択だったように感じます。実際の大きな変化は「人の流れ」が変わったことです。「移動」と「人間の密集」を抑えることが今回の自粛生活でした。
同時に大都市の脆弱性と問題点が浮かび上がったのではないでしょうか?
経済の専門家達からも様々な意見が出ていますが、なかなか具体的な解決策は見つかっていないようです。そんな中、注目される経済や社会学の専門家の意見を聴きながら、私たちが今できることは何かを見つけていきたいと思います。

今後の社会をどのようにしていくのか、まずそれには日本の現状を知ることが大事かと思います。

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新潟県柏崎市鵜川神社の樹齢1000年の大欅

中途半端な自己責任論

特に大都市圏では、自粛生活が2ヶ月続いたことで収入が全くなくなったり、大幅に減少した人は私自身も含めてかなりの数にのぼるでしょう。
ここ数十年経験したことが無いほどの経済的困窮がすでに起きていて、さらに今後も続くことは予想されます。このような時に必要なのは、今をどうやって凌ぐかです。現実的な話ですが今を生きるための「お金」の話です。
日本以外の国や地域による生活環境の違いからも、現在の日本の状況を考えて見たいと思います。要は一人の人間が経済的に困った時に誰が助けるのかということです。

1.家族による救済

日本は基本的にアジアの国の一つです。
東アジア、東南アジア、南アジアなども含めた亜熱帯あるいは温暖なアジアの国々では、母系を柱とした大家族が文化の基盤として社会を形成してきました。
困ったときは家族や親戚、昔からよく知っている地縁血縁関係者による助け合いが暮らしの支えだったと思います。
日本でも農村の村社会や江戸時代から続いていた「五人組」、「連」と呼ばれる共同体が存在し、祭りや田植えなど共同作業で関係を深めてきたと思われます。
このところは変化の兆しはありますが、現在でも多くのアジア地域では家族関係は大切にされ、お年寄りのケアも家族が看取るのが当たり前に行われています。
(日本では「村八分」などのマイナス面もあった思われますが。。。)

2.宗教による救済

中東〜西・中央アジアでは人口の多くがイスラム教徒です。イスラム教の5つの義務の一つでもある「喜捨」という教えから、貧しい人々に寄付する慈善活動(ザカート)により困った人を当たり前にを助けます。
なので乞食が偉そうだという、日本人にしては不可解な現実がありますが、イスラム社会ではある意味で当たり前のことなのです。
敬虔なイスラム教徒の知り合い達は、お金に余裕ができると、競うように病院や学校建設など公共施設へのザカート(喜捨)をしたがります。
(寄付と喜捨は本質は違う行為だと思いますが、ここでは触れません。)

3.国家による救済

さらに社会的先進国といわれる特に北ヨーロッパの福祉国家は、国民の税金を基盤とした分配制度によって格差を減らし、社会が分断しないような仕組みを作ってきました。
日本も中流階級が国民の大部分を占めていた昭和の時代は、特に意識的には現在ほどの格差はなかったかもしれません。国民の多くが自分は中流だ思っていた時代です。
いつのまにか日本はそのどの仕組みも持たない、中途半端な新自由主義的思想を鵜呑みした「自己責任」の国になってしまったことが大きな問題のように感じます。
(何よりも自由を優先するアメリカ型の社会を目指して来た結果と言い換えられるでしょうか?)

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イラン〜アルメニア国境の2000年前のアルメニア教会

1990年代のバブル経済の崩壊や2011年の東日本大震災など、これまでにも何度か生活が大きく変わる危機的状況があったにも関わらず、国民一人一人の意識の変革があまりなされてこなかったということでもあります。
政府の批判は簡単ですが、これは私たち一人一人の意識に関わることだと思います。
「そのうちなんとかなるでしょう。」「誰かがなんとかしてくれるでしょう。」そうした楽観主義も悪くは無いと思いますが、今回のコロナ禍は楽観的な考えだけでは立ち行かない現実が、目の前に迫っているを感じている人は多いと思います。
フランス人の経済学者ジャック・アタリ氏も指摘していることですが、問題をいつまでも先送りすることを続けることは、私たちの未来の社会に「負の遺産」だけを残すことになります。そしてそれはすでに限界にきているのではないでしょうか?

持続可能な福祉社会とは

今回の危機の前からこういう事態が起きにくい持続可能な社会構造を模索し、発表していた研究者は少なくありません。
今こそ彼らの考えを学び、実際に生かしていく時期だと思います。

前回のブログでも紹介した、社会経済学者広井良典氏が「東洋経済オンライン」にコロナ以降の社会のあり方について書かれている記事がありました。
また5月31日のNHKの日曜討論会にも出演されていました。
NHKの報道については色々な意見もあると思いますが、広井氏の長年の研究をより多くの人達に知って貰えてたことは嬉しい出来事でした。
テレビでの広井先生のコメント時間は短く、物足りなさは残りましたがこれまで繰り返し述べてこられた、現代日本の社会政策についての緊急提言でした。
以下は「東洋経済オンライン」に掲載された論文の一部です。

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岡本太郎氏の「明日の神話」福島原発爆発後、何者かに書き加えられた絵。渋谷駅

「AIは<新型コロナ禍の悪夢>を予言したのか?」 
〜少極集中から分散型システムへの転換が急務〜
今回の論文の「AIは〜」というタイトルは、大好きなSF作家Philip. K. Dickの「アンドロイドは電子羊の夢を見るのか?=映画ブレードランナー」の原作をもじったような論文ですが今後の私達にとっての具体的な方向性が記されています。
「端的に述べれば以下のようないくつかの柱に集約される、日本・世界の方向についての構想です。」

(1)「都市集中型」から「分散型システム」への転換

特に強調されていたのは、特に東京に見られる一極集中の問題点でした。
以前にHITACHIと共同で行われたAIを使った大型都市の持つ問題についての「シミュレーション」が、今回の新型コロナ・パンデミックのもたらす課題を“予言”していたかのように、感染拡大で明らかになった社会問題とリンクしていたそうです。
すなわち、「コロナ禍」の問題はそれだけが切り離されて存在するのではなく、むしろ私たちがいま生きている社会システムのありよう=都市への人口集中、格差の拡大、際限ないグローバル化、「スーパー情報化」の幻想それ自体にさまざまな矛盾をはらんでおり、今回のコロナ禍は、そうした矛盾が一気に露呈した局面の1つにすぎないという認識です。

21世紀を迎えた直後のNYの同時多発テロ事件から引き起こされたイラク戦争で、アメリカ軍がサダムフセインの銅像をひきづり倒した時に、ついに人類は「パンドラの箱」を開けてしまったのでは無いかという直感を受けました。
リーマンショックを経て、その10年後に起きた東日本大震災と福島原子力発電所のメルトダウン、そして今回のコロナ禍は私たちが築いてきた現代社会の構造的な問題を、繰り返し問われていると言わざるをえません。

(2)格差の是正と「持続可能な福祉社会」のビジョン

まず広井氏は今回のコロナ禍で現在のところ感染者数と死者数が多い4つの国、アメリカ、イギリス、イタリア、スペインには共通する「あること」が存在すると指摘してます。是非その「あること」とは何にかを考えて見て欲しいと思います。
キリスト教国?帝国主義?などと個人的にも色々と考えて見たのですがピッタリくる共通点は見つかりませんでした。

広井氏は今回の危機が十分に予想されることだと思っていたそうです。
その答えは、これらの国々が「格差」の面で世界で‟トップクラス“の国だというのが共通点だそうです。
アジアでも優等生と言われたシンガポールにおいても、当初中国系のお金持ち達の感染拡大は阻止できていましたが、その後に貧困層の外国人労働者の住む地域で感染者が増え、大きな問題なったことにも思い当たります。
実はこれらを示す「ジニ係数」というデータではアメリカが一番格差が大きく、続いてイギリス、スペイン、日本と続きその下にイタリアという順番になっています。
この中で日本だけ何故感染者や死者が少なかったのは、色々な条件が総合的に関係していると思われます。

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経済格差を表すジニ係数

今回は幸運が重なり感染爆発は起きませんでしたが、その可能性はあったかもしれないということです。
広井氏は「田園回帰がひらく未来」という都市と農村の共生社会の創を目指す取組みにも積極的に関わられて、具体的な活動を含む提言をされています。
ここでは詳しく触れませんが、「日本の伝統文化の再発見。」、「鎮守の森・自然エネルギーコミニティ構想」などの持続可能な具体的な社会の在り方を伝えてくれています。

下の二つの課題に関しては次回以降で紹介できればと思います。

(3)「ポスト・グローバル化」の世界の構想
(4)科学の基本コンセプトは「情報」から「生命」へ

詳しくは東洋経済オンラインを読んでいただけたらと思いますが、では私たちが現在具体的に何ができるのか?
それが「小商のすすめ」です。
ここが一番難しくもあり、大切な部分かと思いますが、つい長くなってしまったので次回に続けたいと思います。

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広井良典氏の最新著書「人口減少社会のデザイン」

*ジニ係数とは (ジニけいすう、英: Gini coefficient)とは主に社会における所得の不平等さを測る指標である。 ローレンツ曲線をもとに、1936年にイタリアの統計学者、コッラド・ジニによって考案された。
それ以外にも、富の偏在性やエネルギー消費における不平等さなどに応用される。

参考サイト:東洋経済オンライン

関連サイト:コロナが露わにしたビッグ・データという幻想 
〜ポスト・グローバル化時代の「生命」と「情報」〜
アフターコロナをどう考えるか? tribe-log.com
止まった資本主義?自然の中の人間 tribe-log.com

執筆者:T.Sakaki