じゅうたんの教科書 Glosarry 用語集 no1.

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じゅうたんの教科書 - コラムその他

オリエント地域の手織りじゅうたんには聞いたことない用語がたくさん登場します。
このところ日本でも、トライバルラグやヴィンテージラグなども紹介されるようになり、部族名、地名、織技法、などは初めて聞く用語も多いと思います。
「じゅうたんの教科書」ではオリエントの手織り絨毯に関連する用語も少しづつ解説していきたいと思います。

じゅうたん用語集 

*英語のアルファベットA-Z順   【】内はジャンルの一例です。
【技法】、【地名】、【部族名】、【歴史】、【機能】、【アイテム】、【染料】などなど。

Abrash: アブラッシュ 【技法】

トルコ語起源の言葉で、一般的には馬の毛色の模様を説明するのに使われる。
まだら、ぶち、斑点など。その用語はカーペットの単色の中の色味(色相)と明るさ(彩度)の少し変化している部分を言い表すために、長い間取引の中で使用されてきた。
それは、異なった2つの現象にあてはまる。

 

その一つは村や部族の洗練されていない(素朴な)技術によって引き起こされる。紡ぎ糸の太さが一定でない毛糸を一度の染色桶で染めると、糸の染め色にバリエーション(不均一性)が作られる場合がある。この糸で絨毯を織ると斑のように現れ、生き生きとした色合いになる。
その逆である完全に均一な色相は、色むらのあるものと比較すると輝きが無く、冴えなく見えてくる。

二つ目は羊毛の一桶で染めた分を使いきって、他の染め束とあまり一致しない物を使い始めてしまう事。
二つの染め束を替えた部分は、目に見えるはっきりとした水平線として見えることがある。クッキリと生じる色の変化である。
主に村や部族の絨毯の収集家は両方のアブラッシュ効果を楽しみ、多くの絨毯商人が深刻な欠陥とみなす色に不均一性を受け入れる。
より洗練された絨毯(ペルシャ絨毯など)であればあるほどこれらの不均一性は好ましくなく、都会的な絨毯では目立った染め色に変化は価値を下げてしまう。

<参考>
*アブラシュ;染め斑。糸染めの仮定で微妙な発色の違いから起こる絨毯の縞状のむら。特に専門の染物師に任せず、家庭で必要に応じて糸をそめるために、染料の量が一定しなかったり、沸騰する温度が違うことなどから、色の濃淡が不本意に起こる。
古い遊牧民の絨毯に見られる染斑は、欠陥としてよりも絨毯に人間味と美を添えるプラス効果と観るとらえ方もある。

 杉村棟氏『絨毯シルクロードの華』用語集より

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左上 :アブラシュ 、中上:アバデ、右上:アフシャール 、右下:アイマク

Abadeh:アバデ 【地名】
イラン南西部のシラーズからイスファハンへ向かう途中にある町の名称。シーラーズに集積されるカシュガイタイプのデザインを絨毯を織る絨毯の産地。

Afghanistan: アフガニスタン 【地名】
文明の十字路と呼ばれる東西文明の交差点として古くから栄えた地域に存在する国家。インド〜イランの洗練された文化を保って来たが、40年近く戦争や内戦が続いていた。北部はトルクメン系部族による赤い絨毯が多く織られ、南西部はバルーチ系部族によるシックな色彩の絨毯が多く織られている。また中西部の山岳地帯はチャハール・アイマク族によるラグやバーリシトなどの袋物。並びに北西部のマイマナやラビジャール地方の大型のキリムも有名である。

Afshar:アフシャール 【部族名】
Avsharとも書く。 トルコ語を話す遊牧(一部は定住)グループで、最大のグループははケルマン西南の山間を夏の放牧するイラン南部に住む部族である。素晴らしいパイルとパイルのないラグを織るが、多様な織り技法のヴァリエーションを持ち、Saidahad(シルジャン)とShahar-babak(シャハール・ババク)とその周辺を集積地としている。ホラーサーンとイラン北西、トルコにも小さめのグループがいる。トルコでは19世紀の旅行者が、遊牧民はだれをアフシャールと呼んた風潮があったので、混乱を招いたむきもある。ナンを包むための正方形のキリム、ナンソフレに面白いデザインが多く見られる。

Agra:アグラ 【地名】
インド西部の絨毯の産地。装飾性の高いゴージャスな絨毯として知られている。

Ahar:アハール【地名】
イラン北西部アゼルバイジャン地方のヘリズスタイルの絨毯産地

Aimaq:アイマク、チャハールアイマク【部族=支族名】
ハザラ・フィロズコヒ・ジャムシーディ・タイマニの4つの遊牧系部族(支族=ターイェフェ)の総称。最近ではタイムーリを加える場合もあるようだ。
チャハールは4、アイマクはモンゴル語で遊牧民という意味。アフガニスタン西部~イラン東部地域に生活しあるグループは定住し、あるグループは遊牧している。近隣のバローチ系のタイムーリ族のものと似ているので混乱することも多い。また、ムシュワニ族*として知られる近隣部族と共通した濃い色の絨毯を織るため、間違われることも多い。

Ak Koyonlu:アク コユンル 【歴史】
アクは白 、コユンルは羊を意味する。14世紀の王朝の名前。白羊朝は、チグリス川上流域を中心に東部アナトリアからイラン西部を支配したテュルク系のイスラム王朝。王朝の基礎となったのはトゥルクメンと呼ばれるテュルク系遊牧民で、バヤンドル部族から出た君主を中心とする部族連合をもととする遊牧国家であった。

Akstafa:アクスタファ 【地名】
コーカサス地方にある絨毯産地名。 尾っぽに櫛のようなモチーフのある鳥紋様(孔雀)のデザインの絨毯で知られている。

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左上:アグラ、右上:アクコユンル、左下:アルティボラキ、右下:アクスタファ

Alti Bolak:アルティボラキ 【地名】
アフガニスタン北部のトルクメン系の絨毯産地名 、主に赤いフィールドの重厚で頑丈な絨毯を織ることで有名な産地。

Amaleh: アーマレ 【部族=支族名】 
南イランのカシュガイ族の一支族の名称。多くの遊牧系部族民は、部族集団(イーレ)の中の支族(ターイェフェ)グループから構成され、さらに下部グループの氏族(ティーレ)から成り立っている。アーマレはカシュクリ、ママサニなど、6つの支族(ティーレ)の一つの呼び名。
(つづく)

参考文献:THE ORIENTAL RUG LEXICON by PETER. F.STONE,
絨毯〜シルクロードの華〜 杉村棟編集 
ORIENTALCARPETS by Jon Thompson.

執筆者:T.Sakaki