日本ではどうして「トライバルラグ」がうけないのか?

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Infomation(コト) - コラムその他

日本ではどうして「トライバルラグ」がうけないのか部族の手仕事を扱う者として常に頭から離れないテーマです。モードの世界では数年前からトライバルなテイストが注目を浴び、ファッションやアクセサリーなどに取り入れられていますが、なぜか『本物』の部族絨毯やテキスタイルはほとんど紹介されていません。
素朴な疑問でもあり、同時に深い背景が起因しているかもしれない絨毯文化については、大げさかもしれませんが、ライフワークになるのではないかと感じています。内容は絨毯やキリムの情報から少しずれるかと思いますが、どうかお付き合い下さい。

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日本の感性をカタチにした千利休

日本国内外でのラグ文化

みなさんは日本国内で「トライバルラグ」が一般家庭に敷いてあるのを見たことがあるでしょうか。一般家庭だとトライバルラグが敷かれているのを目にすることはまず無いと思います。これまで洗練されたショップや、最先端の話題を取り上げる雑誌などでもほとんど紹介される事はありませんでした。どうして日本ではトライバルラグが受け入れられないのでしょうか?

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ファッションシーンのトライバルモチーフ

絨毯やキリムが『好き』という思いで、ラグを購入する機会があまりにも少ない事がその一つではないかと想像していますが、思いつくいくつかの理由をあげてみました。

1.トライバルラグの存在そのものが知られていない。
2.もともと日本人の感性にあわない。
3.価格が高いイメージが先行している。
4.使い方(インテリアとしての)がわからない。
5.販売している専門店や販売サイトが少ない。
6.ラグやキリムに関する情報量が少ない。
7.伝統的な和室などにの敷物(ラグ)を敷く習慣がなかった。
8.日本の室内空間には合わないという思い込みがある。
9.絨毯=カーペットがハウスダストなどの原因というイメージがある。
10.海外旅行などで客引きの激しい絨毯屋の経験から絨毯に対するイメージが悪い。

知ってはいるが好みでないのか、知らないから広まらないのか・・・。
「卵が先か?鶏が先か?」に近い状況だと思います。

正しい答えは見つからないかもしれませんが、このサイトでもトライバルラグの魅力を紹介しつつ、日本人と部族の毛織物(トライバルラグ)の関係を堀さげてゆきたいと思っています。

ブームといえる、海外での熱いマーケット

反対に欧米ではここ数十年間、ブームといえるほど熱いマーケットが、現在まで続いています。数えきれないほどの素晴らしいトライバルラグが欧米へ紹介され、インテリアの必需品やコレクションとして流通し、世代にわたって研究家や愛好家が生まれ、育ち、マニア達のソサエティの輪が広がり、国境を超えた交流が進んできました。

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世界各地からの参加で盛り上がるICOC

このところは当時の勢いは無いものの、好きが高じてなってしまったディラーや熱心なコレクター、大学や研究機関の研究者、美術館のキュレーターなど各分野の人間関係が綿密で、そこにはお互いの利益も共有しあう双方向の関係性が存在しています。人・モノ・情報がタテ・ヨコに交差する事で織り物のように「面」として機能していると言えるかもしれません。一言で欧米人と日本人の嗜好が違うからというだけではなく、様々な要因を探ることで日本人の外国人との根源的な感性や思考の違いまで視野にいれながら、どうして受け入れられないのかの要因を掘り下げてゆきたいと思っています。

進むアカデミズムと充実する美術館

今や日本もサッカー、テニスなどのスポーツ、ピアノやヴァイオリンなどの音楽、建築・芸術、バレエなど各分野で世界のトップと肩を並べるほどの水準です。最近では、よく世界各国のプロプレイヤーたちと並んで活躍する日本人選手をテレビでも見ますよね。それに比べラグやテキスタイルの評価や研究は圧倒的な格差があると言えるのではないでしょうか?第一に絨毯に研究者がいること自体が不驚きかもしれません。

海外ではラグやテキスタイルの専門書を扱う「RUG BOOKS SHOP」を看板に掲げた書店が数件も存在しています。以前はそれすらが驚きでしたが、現在はネットなど発達で、世界各地の愛好家達によるコミニュケーションツールが続々と生まれ、さらにそれらの活用でその動きは驚く程に広がっています。

RugBooks.com---Dennis-and-Wesley-Marquandラグやテキスタイル文化の本の専門店RUG BOOKS

*「RUG BOOKS SHOP」と「RUG BOOKS」は別の専門店です。

同時にここ数年は潤沢な天然資源から生まれる利益を背景に、アラブ諸国やコーカサス〜中央アジアの国々などで、絨毯やイスラム美術を展示する大規模なミュージアムが誕生しています。
2014年8月にオープンしたアゼルバイジャン絨毯美術館はその建物のユニークさと収集品で話題になりました。アジア各地でも富裕層が増えた事で自国のテキスタイルやラグを収集したり、産地や関係の深い都市ではテキスタイル美術館の建設が相次いでいるようです。それに比べると独自の「着物文化」を持ち世界でもトップクラスの染織品の伝統を持つ日本には、総合的なテキスタイル美術館はいまだにありません。繰り返しになりますが、テキスタイルを文脈とした『場』が出来上がる事で、それまでの点が線となり面が生まれてくると考えるからです。日本の伝統染織・アートテキスタイル・海外染織の3本の柱を持つテキスタイルミュージアムの創成が念願です。

日本での期待と胎動

しかし国内でもここ数年でその胎動といえる動きが出てきているように感じています。まずはかなり本格的なブログの登場です。またセレクトショップなどのディスプレイやテレビのCMなどの背景に何気なく使れているキリムやラグを見る機会が増えてきました。まだまだ個人のコレクションや個人のブログ記事なのでなので広がりに欠けるかもしれませんが、これまでには無かった動きを感じています。

今月号のCASA BURUTASでも、そのあたりに触れる特集が組まれています。今まさに織物のような界面(インターフェイス)となるような相互交流の動きが始まりつつあるようです。まずはそのきっかけとなるような情報やイベントを発信して行きたいと考えています。

執筆者:t.sakaki