真芯に響く荘厳さ!イランのアルメニア協会〜ケリーサデ・エステファヌス

2005.4-iranmain

Infomation(コト) -

皆さんは「イラン」と聞くと、国としてどういったイメージを持ちますか?
イラクと並んで、戦争ばかりしている危険な国家、、というイメージがありますよね。
かねてから私の中では、実はそういった形で日本では最も誤解されている国の一つがイランではないかと思っています。
今回はそんなイメージを物色するお話のひとつとして、高い文化価値と気高さのイコン(象徴)とも言える、イランの世界文化遺産を紹介したいと思います。

イランイスラム革命後は反アメリカ的な体制が続いているので、日本に流れるニュースが偏っていることやイスラム共和国として法律はイスラム原理に基づく点などに起因して、近寄りがたい印象があるかもしれません。ただ実際に訪れてみると世界遺産レベルの観光地はあまた存在し、町並みやバザールなども古い歴史をそのまま残しているので、時や自分の精神がタイムシフトしたのではないかと錯覚する、そんな旅の醍醐味を持っているように思えます。

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イラン ケリーサデ(教会)エステファヌス

2000年前のキリスト教会への旅

イランでタブリーズの絨毯商と4年ぶりに再会し商談を終えた後、今日の午後はどこかに行く予定があるかと尋ねられ、特に用事もなかったので誘われるままに出かけたのがこの教会でした。オールドバザールの中に店を持つ絨毯商とは以前に「キャンドバーン」という岩の中の洞窟に人が住んでいる観光地(トルコのカッパドキアのイランバージョン)に出かけたことがありました。

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近くの岩山から切り出した七色の壁

今日は古いキリスト教の教会へいこうというので、初めはガイドブックにも載っているトルコとの国境に近いマクー村にあるガラ・ケリーサ(黒い教会)へ行くのかと思っていました。行く手の看板はトルコ方面からアゼルバイジャン方面へと変わり、アルメニア人の多く住むジョルファへと向かっていました。イランとアゼルバイジャン(ナフチェバン)との国境を流れるアラス川に出たところで川沿いにアララト山方面に向かい、しばらくの間ターコイズ色をした水の流れるアラス川と7色に変化するの不思議な岩山を見ながら進みました。

1時間も走った頃でしょうか、突然車を止めるとそこからは歩いて石ころの多い坂道を登りました。先ほど来た道の岩山にあった様々な色の岩盤をうまくはめ込んだ、美しい教会の建物が見えてきました。

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鍾乳作り(ムカルナス)の入り口

この入り口の門はどこかで見覚えがあるぞ、イスファハンやマシャドのモスクで見たことのあるモスクの入り口のタイル飾りではないでしょうか?どうして教会にモスクの装飾が・・・。この造形を専門用語ではムカルナスというらしいです。聞けば2000年前の建物とか?でもキリスト教が生まれてから西暦2000年ですよね?イラン人はやはり大げさだな~と思いつつも中に足を踏み入れると、そこは静寂の世界でした。

コルビジェのロンシャンの教会のルーツ?

重々しい木の扉を開けて中に入ってみると、そこは白い壁とシンプルな十字だけのある静寂の空間でした。白い漆喰の壁から十字の形の光が差し込む見事な演出は、訪れる人を宗教的な気持ちに誘い込む不思議な世界です。後でこの写真をヨーロッパの美術に詳しい知人に見せたところ、かの有名なコルビジェなどもこの演出をうまく取り入れているのではないかという事でした。

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教会の表から見た十字架のレリーフ

(この壁の外側はこのようになっています)

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教会の内側から見た外の光を受ける十字架

(この壁の内側はこのようになっています)

ピンク・紫・ベージュ・アイボリーなどなど、モザイクのような天然岩の壁には、様々な造形の十字が刻まれています。この大理石に刻まれた十字架のレリーフがどれも見事で、これまでに見た事ないようなバランスの取れた造形を持つもので、キリスト教徒でなくとも思わず十字をきりたくなるような雰囲気が漂っていました。このモチーフなどは、ケルトの神話に出てきそうな美しいフォルムでここがイランであるということは完全に忘れてしまうほど、時間が2000年前にタイムスリップしてしまうかのような、時空を越えた世界でした。

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見事な彫りの壁のレリーフ

この大理石のレリーフの下半分には、おそらくアルメニア語で書かれたと思われる碑文が刻まれていました。そんな美しい大理石のレリーフがごろごろと無造作に転がっていて、思わず持ち帰ってしまいたくなる(いけません!)衝動にかられました。訪れたのは夕方近くでしたが申し訳程度に入り口に居た番人はすでに帰ってしまっています。2000年前のお宝が無造作に転がっている・・・。

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まるでケルトの遺跡のようなモチーフ

やはり遺跡は大事に守らなくては行けないモノだとあらためて感じているこのごろです。

執筆者:T.sakaki