ギャッベとは?〜1986年以降に始まるギャッベブーム〜

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現在日本で最も人気のある手織り絨毯は「ギャッベ」と呼ばれる毛足の長いラグです。全国の家具屋さんやインテリアショップ、このところはホームセンターなどでも取り扱っているようです。日本で最初にギャッベが紹介されたのは20年ほどのJAPANTEXというインテリアトレンドショウでした。知り合いが「ノイトレーディング」というブランドでゾーランバリ社の代理店としてスタートしたのですが、正直これほどまでブームになるとは思いませんでした。

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イタリアからのオーダーのギャッベを織る女性

1986年以降に始まるギャッベブーム

それまで知られていなかった、シンプルな絨毯は一人のスイス人コレクションとその図録から注目を集めることになります。ザクロス山脈周辺の遊牧民の敷き布団として粗野に織られたラグ(GABBEH)は当時の高級品を扱う絨毯商達にはほとんど相手にされていませんでした。1986年に出版されたGabbeh Georges D. Bornet Collection By Reinisch, Helmut by Hali Publications は当時のヨーロッパのアートシーンに受け入れられる新鮮な印象を与えたと思われます。私もこの本の表紙を一目見て驚いたのですが、「えっ!これが絨毯!?」という強烈なインパクトがありました。

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最初に出版されたGeorges D. Bornet Collection Gabbeh

それまでのクラシックで典型的なオリエンタルラグのイメージを大きく変える、プリミティブでミニマルなスタイルが流行したのは当時のヨーロッパのアートシーンが関係していたのかもしれせん。印象派~キュビズム~バウハウスなどを経てモダン~コンテンポラリーアートへ移行する時期とも重なります。大ブレイクしたジョージ・ボーネットコレクションギャッベは、1990年に「ギャッベコレクションPart 2」 がイラン人の絨毯研究家Parviz Tanavoli氏とS. Amanolahi氏の解説で出版されました。

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タナボリ氏が参加したコレクションPart2

そして1995年には「ギャッベコレクション Part3」がコレクター本人であるGeorges D. Bornenet氏自身の解説で出版されギャッベブームという大きな流れを作って行くことになったのです。

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ボーネット氏自身が出版したコレクションpart3

ゾーランバリとギャッベの関係は?

ネット販売サイトなどでも、うちだけがゾランヴァリ社製とかゾーランバリギャッベ専門店などというコピーを目にします。そもそも遊牧民が織った絨毯にそんなブランドがつくのはおかしな話です。
そのようなサイトの多くには華やかな遊牧民女性の写真とロマンチックな遊牧民のストーリなどが紹介されています。元々ゾランヴァリ家とはイラン人の絨毯商でシラーズという町で小さな絨毯屋を営む家族でした。先に紹介したスイス人Georges D. Bornet コレクションを真似て織る事で、スイスやドイツで成功し、その後世界展開をするようになった事は周知の成功物語です。現在は南アフリカにまで支社を持つ大企業です。現在日本で販売されているギャッベの多くは遊牧民の織った素朴な絨毯というよりは、ゾランヴァリ社が巧みにアレンジした現代絨毯(コンテンポラリー)とそれをコピーして織られた絨毯と言えるでしょう。

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zollanvari社の公式サイト

決してゾランヴァリギャッベが悪いというのではなく、売るためにイラン各地の工房やインドなどで織られている、粗くて毛足の長い手織り絨毯が現在の日本にあるギャッベという商品だということです。
言い換えると、イメージとしてロマンあふれる遊牧生活の生活のために織られた絨毯では無いということだったりします。

日本人好みのシンプルで可愛いデザイン!

世界中で最もギャッベが受けているのは日本だと思われます。その理由のひとつは全体に柄がほとんど無く、色が日本に向けたブルーやグリーン系あるいはグレーとか生成りなどの色彩にあると思います。あるサイトに「ギャッベというイラン南部の遊牧民が織る高級絨毯」というフレーズがありましたが、「ギャッベ」という意味はペルシア語の「粗い」という意味でどう見ても高級絨毯とは結びつきません。最近は日本向けにリーズ・ギャッベ(細かい・粗い)などという緻密で薄手なギャッベも登場しているようですが、このあたりも興味深いマーケティングです。日本人好みのシンプルでモダンなインテリアとしてのラグを楽しむのに最適な手織り絨毯がギャッベと言えるでしょう。

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カシュガイ族のオリジナルな動物飾り

ただ遊牧民の絨毯(トライバルラグ)と結び付けすぎる事に疑問を感じるということです。そのあたりをしっかりと理解してインテリアのアイテムとして楽しむには何もいうことはありません。

執筆者:T.sakaki