トライバルな毛織物技法(平織り) キリム綴れ織りvol.1
Posted by tribe on 2014年10月23日
キリム=綴れ織り (タピストリーウィービング)もしくは(スリットウィービング)
日本にも本格的にキリムが輸入されてから20年程になります。10年程前にアジアの家具や布などをインテリアとして取り入れるちょっとしたブームがありました。その頃は青山や代官山などに専門店が数件存在していましたが、その後はすっかり落ち着いて最近ではそれらの専門店はほぼ半減しています。今でも続いているのは、現地人オーナーかネットでの販売に力を入れているところといえるでしょう。そんな事情もあり専門的な情報は限られているように感じます。
今回は知ると楽しい毛織物の技法についてキリム(綴れ織り)とそれ以外の平織りの技法について紹介して行きたいと考えています。近頃は趣味としてキリムを織る人達も増えていますが、様々な技法を知るのは歴史と積算を紐解いてゆくのと同時に新しいアイデアや織りの幅を拡げる機会にも繋がりますので、キリムへの理解が深まるのではないかと思います。
ここでは紹介していませんが、織物の基本構造はタテ糸とヨコ糸を交互に入れる平織です。縞や格子は平織りの一種ですが、幾何学文様や複雑なモチーフを織り込みたい場合に綴れ織りが効果的な技法です。
キリム織りはいつ頃から始まったのか?キリム織りの起源は良くわかっていません。最近は織り手として活躍しているトルコ人キリム研究家ベルピナ-ルさんの研究によれば、アナトリア東部で12000年前に毛織物の断片が発見されたそうです。遊牧民の元祖ともいえる、クルド人達は5000年程前から遊牧していたといわれています。
キリムは生活の道具として織られるので、意識的に保管される事が少ないのと、羊毛が有機物であるために特別な環境以外では土に戻ってしまうため残りにくいのです。比較的古い時代のものが発見されている例としては、エジプトのコプト織です。同じ綴れ織り技法によって複雑で緻密な人物や動物文様が表現されています。また遠く離れたアンデス山中のお墓の中からもインカやナスカ時代の緻密な綴れ織り布が多数発掘されています。しかしこれらはキリムとは呼ばれていませんので、一般には遊牧民の生活道具として織られた毛織物をキリムとしています。
2.はつりのない綴れ織り(横糸が絡まない)
これも綴れ織りの技法ですが、横糸間のはつりが出ないように、同一の縦糸に糸を掛けるという技法です。これによってはつり=スリットがなくなり強度が出るようです。 イラン系の遊牧民やアフガニスタンの騎馬民族などににこの技法が多く見られます。しっかり撚られた丈夫な糸でこれを行うと少し重ねた部分が少し盛り上がった感じがします。
▲インターロック(横糸を絡める)
これも前の綴れと同じようですが、ヨコ糸どうしを絡める点が違います。前の技法よりさらに強度は強くなります。重なる場所違う色糸の場合少しすっきりしない感じはありますが、使い込んでも、その部分から裂けたりスリットが広がったりしないので安心感があります。代表的なシングルインターロックはネイティブアメリカンのナバホ族のブランケットや南イランの厳しい環境の地域の部族に見られます。
▲シングルインターロックとダブルインターロック
シングルインターロックは上の技法で一段のヨコ糸に一段のヨコ糸を絡める技法です。
ダブルインターロックは同様の技法で二段づつの上下の段を絡めます。
両方ともさらに強度がでて丈夫なものになります。アフガニスタンのタタール系部族や移動距離の長いことで知られるイランのバフティヤリー族などにもよくこの技法がみられます。コプト織りのほかにも中国の皇帝の衣裳(龍衣ロンパオ)や日本の帯などにもこの綴れの技法の卓越した織物が見られます。京都の祇園祭の山鉾に掛けられる縣装品などにも世界的に貴重な綴れの技法の織物がみられます。
次回はさらに複雑な平織り毛織物技法を紹介したいとおもいます。個人的には技法については詳しくないのですが、技法を知る事で部族を特定できたりするので外せないテーマのひとつです。