文様はどうして生まれたのか? 文様の意味をひも解く1.
Posted by tribe on 2015年3月26日
私たちの身の回りにある様々なマテリアルの施されるパターンやモチーフの源流がどこにあるのか?皆さんは考えて見たことはあるでしょうか?
カーペット、カーテン、壁紙、タオル、シーツ、ベットカバー等々数え上げたら切りがない程たくさんのデザイン(文様)が身近に存在しています。文様意味の解明は最も興味のある分野です。じっくりと時間をかけながら、ラグやテキスタイルなどの実物を見ていて感じたこと、文献等で調べた事、生産地の人達から直接聞き知ったことなどをまとめながら、少しずつ紹介して行きたいと思っております。どうぞ末永くお付き合い下さい。
文様の広がりは伝播か共時性か
最初にモチーフ(文様)がどこで生まれ、どうして発達し、どのようにして広がっていったのかに注目したいと思います。まずは世界各地に残るモチーフが地域から地域へと伝播していったのか?それとも世界各地に共時的に発生したものなのか?を検証してみたいと思います。
最先端の科学で解明される現象と古くから風土に馴染んで生きて来た先住民族の知恵とが、以外と近いところにあるのではないかと考えるようになりました。私たちの現代社会にもひそかに影響を与えそうな文様の奥深い世界を紹介してゆきたいと考えています。
最先端科学とモチーフの関係とは?
このところ新しい研究が急速に進み、その構造や以外な機能が解明され始めている分野に脳科学の世界があります。紋様や色彩が脳内物資を発生させる分野に刺激を与えているかもしれない事などです。例えば心理学者のユングが提唱して西欧でも有名になった「曼荼羅」などは世界各地に存在している典型的な精神世界と繋がるパターンといえるかもしれません。
無意識の世界に深く関わる直感と文様の関係、色彩と感性の関係など、部族の毛織物には現在と過去そして未来への鍵がメッセージとして織り込まれているのではないかと想像できます。まさに神話的世界と共通するといえるでしょう。
また最先端の科学が超えられない、時空の壁や4次元の物理的世界と「空飛ぶ絨毯」の関係などです。(笑)
トライバルモチーフ(先住部族の美意識)
最も原初的芸術表現として、石器時代の洞窟に見られる手形などのサインや美的完成度の高い動物などをモデルとした壁画など、何かを伝えるための痕跡は人類の美術史のうえに膨大な足跡を残してきたと思われます。
言葉が始まり、文字が生まれ、伝達の可能性が急速に広まったものの私たちは依然としてモチーフのなかから多様なイメージを想像することが出来るのではないでしょうか。遊牧民の毛織物の中に見られる洗練されたモチーフだけに限らず、アフリカ〜北・中央・南アメリカ〜オーストラリア〜ユーラシアの大陸および環太平洋の島々など、地球上のいたる所で先住民族達は大量のメッセージを残しています。それらは自然と共存共栄してきた彼らの美意識の結晶として、我々になにかを伝えているのかもしれません。言い換えれば、先住民が生きていくなかで何を最も大切にしてきたのかを知る事にも繋がります。ネイティブな人達の手仕事には自然環境により素材や用途、目的は違っても、効率や合理性では測れない美の追求が見てとれます。
遊牧民族の毛織物には、あくまでも生活のための道具でありながら、用の美を超えた装飾性が見られますが、どう見ても作業には不具合な過剰な飾りをたくさん付けています。
私たちが、快適、便利、効率を常に追い求めているのとは対極的な価値観をもっているかのようです。
何が彼らにそうさせるのかを知りたくても、そのモチーフそのものが生活の中に溶け込んでいる部族達とかけ離れた生活環境に居ては、その真の意味は容易には見えてきません。先住民や遊牧的部族達は、超自然的な存在を信じ、そのイメージを見ることのできる人達(異界の存在を確信する人=シャーマンなど)を信仰する世界に生きている人々と言い換えることが出来るかもしれません。異界を信じ、その中に畏れと共に多くの根源的なビジョンを見ることができるのでしょう。
アフリカンデザインにこめられる意味
アフリカのコンゴのクバ王国のショワ族やブショング族のラフィア素材の織り布に関してのジョークとも聞こえる逸話があります。
この地域に最初に入った文明の道具オートバイについて、彼らが興味を抱いたのが、オートバイそのよりも、通り過ぎたあとに土の上に残されたタイヤのパターンであったといわれています。
このショワ族やブショング族達は一般的に「草ビロード」と呼ばれる、刺繍やアップリケ、絨毯のようなパイル構造等、様々な技法を用いた儀礼用の布を織ることで知られています。
この芸術的な布は、根気のいる作業もさる事ながら、その根源的で摩訶不思議なモチーフはクレーやマチスに多大な影響を与えたといわれる独創的なセンスを持っています