アフガニスタンテキスタイル ナマッド(=フェルト)との出会い

Posted by tribe on 2015年3月4日

ここではこれまでに扱った部族の絨毯・キリム・テキスタイルの中で印象に最も印象に残っているものをご紹介させていきたいと思います。
これまでに数えきれない程のラグやキリムを見てきましたが、このフェルトは量感、力感、浄感のどれもインパクトに溢れています。美の絶対的な価値を追求し多くの文化人達に影響を与えた青山二郎氏が「モノ」について「作り手の内面が表に現れた像としての形」が美しい姿であると言っていますが、フェルトは作り手の意思とはかけ離れた「像」が偶然に表れるという、他に例を見ない作る時の独特な技法とも関係しているからかもしれません。

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アフガニスタン タイマニ族 フェルト

英語のNomado(ノマド)の由来であるフェルト=ナマッド

フェルトは、織物ではありません。羊毛(フリース)を敷き、そこに加圧力をかけることで、羊毛が縮み、絡み合うことで固まる羊毛の性 質を最大限に生かして作られるモノです。様々な手仕事の中でもかなり古い時代から製作されたと想像されています。2400年前のシベリアのスキタイ族のパジリク古墳からも見事なフェルト作品が発掘されています。

羊毛文化の原点ともいえるフェルトはペルシア語で「ナマッド」と呼ばれていますが、これは英語の遊牧民(NOMAD)の語源になったのではないかと思います。

遊牧民の原点とも言えるフェルトの敷物

このナマッド(フェルト)は特に遊牧民族には欠かせないものであり、乾いた砂漠や草原、ごつごつした岩場などにテントを張る際の床敷きとなります。

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フェルト 上半分のモチーフ

また、雪や雨を避ける ためのテントの屋根や壁としても大変重要な役割を果たします。私達の良く知るモンゴル地域の遊牧民の住居=ゲルなどもこのフェルトですっぽりと覆われています。ナマッド(フェルト)は、キリムや絨毯などの織物と違い人の思い通りに線や柄が表現できない面白さがあるということです。文様を表現するためにある程度の全体像を意識して色のついた羊毛(フリース)を配置しますが、簀巻きにして力を加える事で羊毛が縮絨という絡み合う原理で出来上がるため、まっすぐに思い描いた線も歪んだ形状になってしまう場合が多いのです。今回紹介するアフガニスタンのフェルトはまさにフェルト技法特有のアバウトさが生かされた、人の技術から少し離れた所で表れる造形の面白さにあるでしょう。

他に同じようなモノをあまり見た事がないので、産地を特定出来ませんがおそらくタイマニ族のモノではないかと想像しています。根拠はありませんが、彼らが織る絨毯やキリムとどこか共通な味わいがあるからです。この味わいは言葉でうまく表現できませんが、独特な風合いとでもいえるでしょうか?

アフガニスタンの大地に似合う大胆なフェルト

まずは染めていない焦茶色のベース(下地)の色合いがこのフェルト全体を引き締めています。全体はオレンジ・臙脂・深緑・水色・生成りなどの色が使われていますがとにかくインパクトのあるモチーフが目に入ってきます。縄文時代の土器を思わせるような迫力で迫ってきます。インパクトが強いので見ていると疲れてしまいそうですが、それが逆に気持ちが落ち着く優しさと包容力を持っているように感じます。

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フェルトの力強いモチーフと色彩

このフェルトを入手したのも不思議な縁がありました。羊毛文化の源流であるフェルトを紹介したくてフェルトを愛するの作家の方にお願いして渋谷の百貨店でフェルトのワークショップを開催していた時の事です。アフガニスタン人が大きな風呂敷を持ってふらりと訪れたのですが、彼が持っていたのがこのフェルトでした。まさにフェルトが飛んで来たというかんじでしょうか!?

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フェルトの歪んだ曲線のモチーフ

現在は福島県のいわき市の陶芸家の元にありますが、時々訪ねて見に行きたくなってしまうな魅力をもっています。