文様の先にあるのものとは? 〜文様の発祥と未来〜
Posted by tribe on 2015年10月22日
所沢市の航空公園近くのギャラリーforma(ファルマ)さんにて10月31日迄展示しています。24(土)は2回目のお話をすることになっています。
移転した清瀬からほど近いギャラリーですが、ギャラリー経験も豊富で布好きなオーナーとの話が弾みます。
また、コーヒーも美味しく手作りの焼き菓子などもあるのでお茶だけでも十分に楽しめます。
2回目は「毛織物の文様」についてです。
このテーマは奥が深く幅も広いテーマなのですが、個人的に最も興味のある分野なので、とても30分程度では終りそうにないのですが、今回は文様の意味に関する様々な話題の整理もかねた問題提起の「場」として、良い機会となりそうです。
「文様の意味」についてどんな話をしようかと思いを巡らせているうちに、相対的な二つのトピックが存在しているように思えてきました。
例えば、模様と文様、オリジナルとコピー、伝播と共時、柄と余白、記憶と創造、意識と無意識など、相反するようでも実は関係性が深い、文様の意味を考える助けになる要素を頼りに、表現された意味を掘り下げてゆけたらと考えています。
人はいつ頃から文様を表現するようになったのか?
現在は、様々なモチーフやパターンが存在していますがヒトが普通にに文様を表現するようになってから5〜6万年ほどしか経っていないようです。このトピックは別の機会にじっくり考察したいと思っていますが、二足歩行する原人がアフリカで誕生してから600万年の中で594万年は人工的な文様や絵画的な表現をあまりしてこなかってようです。ところが6万年前くらいから洞窟などの壁画に動物やハンドサインなどのメッセージ性のある表現を残すことが始まりました。それから人類はものすごいスピードで進化し、その勢いは年々増すばかりです。人類史上最後の1%の時間で、人類は目覚ましい変化を遂げたということです。
私達の先祖が何のために洞窟などに絵を描くようになったのか?
動物などの絵画的表現には、どんな意味がこめられていたのか?
そしてそのような芸術活動ををするようになってから、どうしてこれだけ急速な進化を遂げたのか?
疑問符ばかりですが、それには「認知考古学」という分野が答えを解明しようと試みています。文様を表現したり文様によって得られる心的印象が、心とイメージにどのように関わり、その成長や発達に関係してきたのかを知る手がかりになりそうです。
模様と文様(紋様)の違いとは?
現代の日常生活には文様が溢れていますが、これらを大まかに分けるとしたら、人口的に表現された文様と自然が生み出した模様とに区別できるかもしれません。
壁紙やカーテン、服などに表現された図柄はデザイナーの手による文様です。
それに対してフローリングやテーブルなどの木目、秋の空に見られるウロコ雲のような自然が生み出した模様です。
辞書などで二つの言葉の違いを調べてみると、「模様」と「文様」は同じ意味として使われることも多いようですが、文様は主に工芸品や美術などの様式的な表現に使われ、模様はヒョウやシマウマなどの動物のパターン、雨模様や空模様のような自然現象にも使われることが多いようです。英語にもモチーフとパターンという二つの単語が存在しています。
ラグの文様について見てみると、ペルシア絨毯に見られる工芸的な意匠はまさに文様といえますが、トライバルラグの柄が途中で終ったり、色が変化したりする不完全な文様表現は、自然の生み出す模様に近いと感じることもあります。これは文様を表現する作り手の意識とも深く関わってくるのかもしれません。
意味を持つ文様とあまり意味の無い文様の違いとは?
文様の意味を整理する補助線として、それ自体に深い意味を持つ文様と、見立てや作者(デザイナー)の自己表現としてのそれ自体にあまり意味を持たない文様とに振り分けることができそうです。歴史的な背景を持つ伝統的な文様の多くは意味を持つものがほとんどで、神話・宗教(信仰)・魔除け・身分・階級・家紋などを表す文様を多く見つけることが出来ます。
それらには、記号としてのコミニュケーション性や教訓なども含むメッセージ性の強いものも多いのですが、家紋やエンブレムなど文様自体に階級や身分を表し、特権階級や王族など特別な人達しか持つことの出来ない文様もあります。また本来は深い意味があった文様が形骸化し、デザインだけが残っているモチーフも多く見受けられます。
特に日本では元来魔除けや階級の身分を表した文様が、日本ナイズされて、美しさや流行として取り入れられて行く傾向があると思われます。逆に日本古来の家紋などがファッションとして欧米人に取り入れられることもあるようです。
同時に日本には、草花、鳥、風、月、虫、縞、格子、などなど風流や見立てとしての美的感覚や遊び心として取り入れられる文様も数多く存在しています。
自然環境が厳しく、対立、抗争の多い大陸に多く見られる邪視よけ(魔除け)、幸福への強い願望を表す祈りの造形などが、淡白でしなやかなな風合いを持つ日本的な意匠へと変化して来た例も見られます。もちろん文様には何らかの意味が含まれていることでしょう。しかし、日本ナイズされることで本来の意味が薄まり、意味よりも見た目という美的な側面だけが残ることもあったはずです。
3万を経て現在に至るまで続く文様の意味を掘り下げるのは、丁寧で時間をかけた検証が必要でなことでしょう。
文様表現の初期に生まれたと思われる洞窟絵画や岩絵などの、トライバルモチーフには人と動植物の繁栄や安定、幸福などを願う意味が共通して籠められていたことでしょう。