オークションに欠かせない「目利き=鑑定人」の存在

Posted by tribe on 2014年10月21日

「目利き」とは真贋を正しく判定するアカデミックな鑑定眼を意味するようですが、この鑑定人の『目』によりオークションの相場が決まります。
そこで付加価値の高いオークションに欠かせないのは「The connoisseur=鑑定人」の存在です。日本でも「お宝鑑定団」というテレビ番組がありますが、そこでも相場価格を付けるのが「鑑定人」の存在です。専門知識と価格査定経験をつんだベテランの鑑定人は、そのネームバリューでオークションの見積もり価格(エスティメイト)にも大きな差が出てくるようです。

優れた目利きは文化をリード!

日本でもかつては骨董品を肴に様々な角度から文化を語り合う『集い』が存在していたようです。その代表的な集まりが「青山学院」とよばれた青山二郎を中心としたサロンです。
小林秀雄、白州正子、永井龍雄など当時の日本をリードする批評家や小説家などの文化人が生徒として集まり、モノと人、モノと事について熱く語り合っていたようです。彼らは同時に優れた鑑定人でもあった事でしょう。

本場ロンドン・キングスロードの有名鑑定人とは?

本場ロンドンの絨毯やイスラム美術に関しての鑑定人は、Christie’s London, King Street (クリスティーズロンドン)のWilliam Robinson氏が有名です。Christie’sの看板コノサー(鑑定士)であり、彼の鑑定するアンティークの品々は世界のコレクターから高い信頼を得ています。

2007年のICOC イスタンブールの会場だったスイスホテルのラウンジでMR.W.Robinsonと話す機会があました。偶然に彼のキュレーションで開催された1991年のイスラムアートコレクションのカタログを持っていた事で話が盛り上がりました。ロンドンの有名大学で美術史、考古学、イスラム建築などの博士号という素晴らしい経歴をお持ちでしたが、大学教授のような知識と、代々古美術を扱う家柄に生まれた、優れた目とインテリジェンスを併せ持ついうまさにサラブレッドのような存在でした。

Christie’sLONDONはICOCの協賛企業のひとつでもあったのですが、彼のような鑑定人と美術館のキュレーター(学芸員)そしてアンティークディーラーとの関係はとても良好で、お互いの知識利益を含めたの交流は大切な情報の相互流通効果を生み、マーケット全体が盛り上がる事を実感しました。ただし、そこに大学や専門機関の教授、研究者、コレクターなども含めた全員が、深い知識と豊かな経験を併せ持ち、同時に絨毯や布が純粋に「好き」であるという情熱を持っている人たちの存在こそが、なによりも大切だと感じました。

R0015004
国際じゅうたん会議のトルクメンコレクター&研究者

キュレーターとコノサー(鑑定人)の関係とは?

また、Sotheby’s New York, Rockefeller Center のconnoisseur(鑑定家) Mary Jo Otsea女史も素晴らしい教養と専門知識を持つ鑑人ですが、オークションでの鑑定業と同時に、世界の手織絨毯研究の発表会などでは欠かせない研究者としての顔を併せ持っています。

海外では美術館のキュレーターとオークションの鑑定人、大学などの研究者、ディラーとの交流が進んでいます。お互いに利害関係が成り立つマーケットが存在しているのがその理由でしょうが、少し違う分野からの視点を持つもの同士の情報交換はとても勉強になります。

商人のフィールドでの駆け引きの経験、キュレーターの企画&編集力、大学研究者の深い専門知識、鑑定人の真贋を見分ける目などが、総合的に加味される事でモノへの深い理解が生み出せるように感じます。ラグ好きにとっては本当にうらやましい環境です。