和とアジアンテイストのインテリアブームとは?
Posted by tribe on 2015年4月15日
15年程前に「和」と「アジア」のスタイルが人気を集める時期がありました。
インテリア雑誌や女性月刊誌がアジアと和を組み合わせた、家具、布、キリム、雑貨、買い付け旅行などの特集を組み、別冊号が次々に出版されました。主婦層に向けた内容に徹していて、読者や関係者の自宅を取材した部屋作りの具体例が中心です。末尾には当時のブームに乗って次々とオープンしたアジアングッヅのお店が何軒も紹介されています。
その流れを受けて平成14年には「キリムのある素敵な暮らし」という最初で最後?のキリムを中心に据えたインテリアを紹介する雑誌が発売されています。この黄金時代から暫くの時間が流れましたが、現在その特集号で紹介されたショップは3分の1ほどしか残っていません。
私たちは「和」や「アジア」をブームとして終らせてしまったのでしょうか・・・?
居心地の良い?『和』と『アジア』のインテリア?
雑誌の巻頭にはどれも同じように”温かみのある”・”居心地の良い”・”心を和ませてくれる”などのコピーで飾られています。このブームはバブル時代のひたすらにゴージャスさを追い求めた反省と、絢爛豪華な装飾に少し疲れ、反動としてアジア人に共通する自然な素材や素朴な手仕事に回帰したいという願望があったのかもしれません。
しかし現実の当時の住いは屋根と柱構造の和風建築はおろか畳敷きの和室も姿を消し、床・壁・天井のパネル工法の住宅やマンションに変化してしまっていたと思われます。当時の床材の調査データがありますが、敷き込みカーペットは20年前の20分の1にまで減少しいわゆるフローリング床が急速に広がっていた時代です。
婦人家庭生活シリーズの「和とアジアのインテリアが新鮮」というタイトルの雑誌の記事に『普通のアパートやマンションの和室以外の床は化繊のカーペットが敷いてあるか、たんなるフローリング。潤いのある暮らしのために、アジアのカラフルなジュータンは欠かせません。』というコメントが掲載されています。背景には冷たく固いフローリング床材にまだ慣れていない当時の様子も見て取れます。その直後にあった小さいキリムブームもその辺りが関係しているかもしれません。
その後も続く「和」への回帰と北欧インテリアブーム
アジアの家具や雑貨がブームを迎えると、あちこちで質の悪い模造品が作られるようになりました。シンプルで素朴な家具や雑貨はもちろん、コピーと本物の違いがわかりやすい染織品も合成染料の機械織り製品が続々登場しブームは次第に終焉を迎えます。
当然経費のかかる都心の路面店や大掛かりな店は消えて行かざるをえなかったといえるでしょう。青山〜代官山〜目黒通りなどに多かった家具&雑貨のショップは都下やマンションの一室などへ移転するか、衣料や食品などの違う業種へシフトしていきました。アジア雑貨に比べると職人気質な和の手仕事はその品質の高さから今でもデパートの「伝統工芸展」などの催事などで続いていますが、インテリアの流れはシンプルでモダンなデザイン性を持つ「北欧」へと移っていったようです。北欧デザイナーの椅子は根強いファンも多く、雑誌の特集号が何冊も出版され、インテリアには限らない男性向けの雑誌にも取り上げられているのが特徴と言えるかもしれません。
「和」や北欧とも融合したアジアンはくるのでしょうか?
このブログでも何度か紹介しましたが、このところ「民芸ーmingei」が熱い動きを見せています。
本来は創始者柳宗悦氏の直感で選ばれた美しい「モノ」が、取り巻きの作家仲間を巻き込みながら、徐々に集まって行く過程で、様々な意味や価値を付着させ、変化を続ける時代の中をくぐり抜けて、現在にもしつかりと伝わっています。
北欧の家具という絶妙なパートナーを見つけ、このところはモノ文化の先頭を走る人達に受け入れられつつ、新たな広がりをみせています。
つい最近もメジャーな情報誌「Casa BRUTAS」で〜Life with Folk Art〜「世界の民芸とスタイルのあるインテリア」という特集が組まれていました。十数年振りに見るアジアやアフリカの手仕事は流行の兆しを見せるのでしょうか?
ブームがくれば、いずれは15年前と同じように粗悪なコピー製品がはびこり斜陽に向かうのか?
有名雑誌やオピニオンリーダーから発信される情報には、とかく影響を受けやすいものですが、ここはしっかりと足もとを見つめ、何を選択したらよいのかを個人個人の直感を磨きながらそれぞれが自分自身の目でセレクトしてゆけたらと思っています。
世界を覆い尽くすグローバリゼーション(均一化)の大波の中で、はるか昔から何世代に渡って続いてきた地に足のついた美しい手仕事は「基点」として私たちの道しるべとなりえるでしょうか?このブログの大きなテーマの一つとして継続して掘り下げてゆきたいと考えています。