~インド北東部の特異な服装~@岩立ミュージアムの展示会
Posted by tribe on 2015年3月15日
3月28日(土)まで自由が丘の岩立フォークテキスタイルミュージアムにてめったに見る事の出来ない展示会が行われています。『インド北東部の特異な服装』サブタイトルはナガランド州、アルナーチャル プラーデーシュ州というかなり絞り込まれたコアな内容です。
この二つの地域がインドに属している事も不思議ですが、インド最東北地域のアルナーチャル プラーデーシュ州についてはこちらも展示会をみるまでほとんど知らない地域でした。
北はチベット(中国)、西はブータン、東はミャンマー、南はインドのナガランドに接する地域ですが、インドと中国という大国の狭間で軋轢と覇権争いを経験している地域のようです。
一方ナガランドは美しいブランケットとつい最近まで首狩りが行われていた事で知られていますが、両地域とも数年前までは一般の外国人の立ち入り禁止されていたこともあり、未知の国として秘境好きな旅行者や布好きとっては一度は訪れてみたい場所とされてきました。
モンゴロイドの二つの顔を持つ対極の地域
程よい広さの会場に展示された二つの地域のテキスタイルや民族衣装は違った存在感を持っていました。見る前までは同じモンゴロイドで、住む場所も近いという表面的な知識から似たような民族文化(テキスタイル)を持っているのではないかと想像していましたが、それまでにもっていたイメージが完全にくつがえされる、まるで違う顔を持つ人々でした。
これはまったくの個人的な印象ですが、ここは洗練された土着性と品格のある野蛮性とが入り交じった世界です。キリスト教が広まる前まで、アニムズム的世界観のなかで先祖と自然を崇拝していた南〜東南アジア先住のプロトタイプ先住民族(首狩りの風習を持つ)の色合いの強いナガランド、かたや古くからチベット仏教の影響を受け、仏教的価値観のなかで殺生をタブーとする近代的(仏教的)な規律社会という、ある意味で両極の価値観を持つ人達の世界観が隣あって展示されている事に少なから衝撃をうけました。
賞賛と名誉のナガランドブランケット
今回の展示会の案内状のトップも大きく紹介されているのが「Chakhesangナガ」の人達にとっては賞賛と名誉のブランケットです。私たち日本人にもよく似た顔立ちの『ナガランド』の人達には昔から深い興味をもっていましたが、最近は洗練された若者達が増えているようです。とにかく美男美女が多く「カッコイイ!」のです。表面のおしゃれさと同時に先祖から受け継ぐスピリチュアリティ(霊性)を受け継いでいる感じがします。なかでも先祖代々受け継がれて来たブランケットは、かれらにとって特別な意味を持つようです。
こちらのブログを参考にしていますが、現代版「Chakhesangナガ」のブランケットを纏ったモデルさんがほんとうに素敵です。この地域でこのブランケットを身にまとえる人は部族社会から認められた「賞賛と名誉」を身にまとう事に繋がるそうです。展示会場には現在ではほとんど見るこ事の出来ないオリジナルの古い、貴重な布が展示されています。
神秘の赤い衣を纏うモンパ族人々
すでに終ってしまった講演会の紹介で恐縮ですが、展示会場において「アルナーチャル プラーデーシュ州のモンパの服装の変遷」というテーマの講演会がありました。長い事秘境旅行の専門旅行者の添乗員を努められてから、モンパ族の文化に魅せられて大学で文化人類学を学び、ついには博士号を習得された脇田道子さんによるお話でした。素朴ながら深い精神性を持つモンパ族の暮らしと生き方は私たち現代日本人に将来の道標となりそうです。ラックという虫の巣で染められた赤い衣には彼らの知恵と誇りの結晶のように思えました。
インドという大国に組み込まれ、隣合う大国中国と間に複雑な国境問題などを抱えた、この二つの地域にすむ人々は、どうしてここまでシンプルに自分たちの暮らし方を保って来れたのか?
彼らは私たち日本人に似た顔立ちでもあり、とても親しみやすさを感じます。私たちのオリジン(源流)を直感させてくれる最後の秘境として是非知って欲しいと思いました。
残りの公開日は19(木)20(金)21(土)祭日
3月26(木)27(金)28(土)6日間です。
会場住所:〒152-0035 目黒区自由が丘1-25-13 岩立ビル3F TEL:03-3718-2461
会場:岩立フォークテキスタイルミュージアム http://iwatate-hiroko.com/
協力:岩立フォークテキスタイルミュージアム 廣田繭子(学芸員)
引用:TETSEO*SISTERS 公式ブログ