遊牧民の用と美◇ トライバルラグと染織品@清瀬市郷土博物館

Posted by tribe on 2022年5月8日

このブログもついに200回目の投稿となりました。 
途中何度も更新が途切れたり、長きにわたって滞ったこともありましたが、お陰様でなんとか続けることができました。
今回は今後のターニングポイントとなりそうな企画展示のお知らせです。

来る6月1日より、地元清瀬市の郷土博物館にてトライバルラグの展示を行います。

会期:2022年 6月1日(水)ー6月11日(土) ※ 6月6日(月)
期間:午前10時〜午後5時まで
場所:清瀬市郷土博物館 【入場無料】 住所:東京都清瀬市上清戸2-6-41
電話:042-493-8585

展示会内容についての問い合わせ:09091339852 tribe 榊
mail:tribesakaki@gmail.com

遊牧民の用と美◇ 西アジアのトライバルラグと染織品@清瀬市郷土博物館

今回の展示では西・中央アジア(イラン〜アフガニスタン〜コーカサス〜トルコ)に暮らす遊牧民の様々な手仕事約200点を一同に紹介する予定です。
三十数年にわたって集めたオリジナルの古い絨毯、キリム、スザニやマーシュアラブの刺繍布、民族衣装などなどの収集品を一同に清瀬市博物館にて展示します。これまでの展示会ではあまり広げる事が出来なかった、フルサイズの絨毯やキリムも展示できるのでとても楽しみな企画です。

2022年 6月1日(水)ー6月11日(土)※ 6月6日(月)
期間:午前10時〜午後5時まで
場所:清瀬市郷土博物館 

今回清瀬市の郷土博物館で展示ができることになったきっかけは、『うちおり』と呼ばれる清瀬市周辺の自家製織物との出会いからです。『うちおり』とはあまり聞いたことのない名称ですが、現在の清瀬市周辺の東村山、東久留米、所沢地域の農家の主婦たちが「自家用」に織った織物の呼び名だそうです。

清瀬周辺の伝統的染織品 うちおり 

『トライバルラグ』と『うちおり』

清瀬市の第2代の市長を務められた故星野繁氏の奥様である星野輝子さんを中心に調査研究が進められ、平成29年には「清瀬のうちおり」として、国の重要有形民俗文化財に指定されています。
これらの織物は主に明治時代から昭和の初期までの間に続けられた手仕事で、農業が主な産業であったこの地域で農作業と共に行われていた養蚕業との関係が深いと思われます。
『うちおり』とは、商品として織られたものではなく、家族のために手元にある材料を使って織られた織物で、内容としては反物・半纏・着物・裂(きれ)などがあるそうですが、清瀬市郷土資料館に常設で展示されています。
遊牧民が自らの生活の道具として織られてきた、トライバルラグと『うちおり』には様々な共通点もありそうです。
今回の展示の「遊牧民の用の美」も敷物、掛け布、袋物、荷紐などなど、商業用ではなく家族や自らの道具として織られたものです。

国の重要有形民俗文化財に指定されているうちおり

清瀬のうちおりは明治から昭和の衣文化を知る貴重な資料

 

この「うちおり」は、商品としてではなく、農村の女性たちが家族のために織ったもので、村山絣や村山大島紬のように、決まった工程の下に織られた規格品と違い、養蚕が盛んだったことから屑まゆからとった絹糸や木綿糸など手持ちの材料を使い、糸繰り・糸染めなどの工程を織手自身が工夫しながら仕上げたもので、縞織物などは、素朴ながら深い味わいがあります。
母親から娘、娘から孫へと技術が受け継がれ、家族の着物や野良着、布団皮などを作るために、農作業や家事の合間に織られてきました。
また、嫁入りの時には、祖母や母親に織ってもらったり、手伝いながら自分でも織った「うちおり」の絹の布で、晴れ着やよそゆきを仕立てて持参していたため、清瀬の農家には、自分の家で織ったもののほかに、周辺地域から嫁ぐ際に持参したものもあります。
このたび文化財の対象となった衣料は、明治時代から昭和20年頃にかけて織られたもので、特に縞織物が中心で、良好な状態で保存されていたものばかりです。どれも織手の工夫や家族への愛情が伺われます。

これらは、「うちおり」の性格を知る上で貴重な資料となるばかりでなく、所有者から聞き取りが得られているため、いつ頃どこで織られたのか、また誰が織ったのか、さらに嫁入りや帯解きなど使用目的が明らかにされているものが多く、清瀬市及び周辺地域における明治・大正・昭和の衣文化、生活や習俗を知る上で、歴史的価値が極めて高い資料であると言えます。

『うちおり』が出来上がる工程や背景を知るほどに、遊牧民の毛織物に共通点を見出すことができそうです。

清瀬市郷土博物館の図録

『トライバルラグ』と『うちおり』の共通点とは

民藝運動の創始者柳宗悦氏もたびたび私たちの身の回りの普段遣いの道具が、いかに美しく健康的であることを述べています。
日々の生活の中に直接必要な品々であり、個人ないし家族の手によって作られ、素材から織機までほぼ個人もしくは家族で行う丈夫で長持ちするトライバルラグと、売り物にはならないクズ繭から引いた絹糸や木綿の残糸などで家族のや自分のために織られた『うちおり』に通じるものを感じます。
展示期間中は『トライバルラグ』と『うちおり』の両方の実物を見ていただけると思います。遠く離れた西アジアと武蔵野で育まれた手仕事を通じて、その共通点や違いなどにも視線を向けられたらと考えています。

こちらも合わせてご覧ください。 遊牧民の用と美◇トライバルラグと染織品@清瀬市郷土博物館 その2(遊牧と定住)</p>

民族の詩集や衣装なども展示します

皆様のお越しをお待ちしています

参考資料:『うちおり』〜清瀬市及び周辺地域の自家製織物〜 清瀬市郷土博物館図録
     『民藝40年』 柳宗悦著
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