遊牧民の用と美◇ トライバルラグと染織品@清瀬市郷土博物館 その3(道具としての機能)
Posted by tribe on 2022年6月1日
「遊牧民の用と美」展についてのご案内の3回目です。
本日より清瀬市郷土博物館にて展示がスタートしました。
会期:2022年 6月11日(土)まで
※ 6月6日(月) 博物館休館日
期間:午前10時〜午後5時まで
場所:清瀬市郷土博物館 【入場無料】 住所:東京都清瀬市上清戸2-6-41
電話:042-493-8585
展示会内容についての問い合わせ:09091339852 tribe 榊
mail:tribesakaki@gmail.com
今回の展示は遊牧民の生活道具としての毛織物(トライバルラグ)にスポットをあて、
「しく」・「かける」 ・「いれる、はこぶ」の機能ごとに分類した展示を行っています。
<トライバルラグの機能分類>
1.「しく」 敷物
「敷物は敷かれる場所や環境」によって、パイル(絨毯)、平織(キリム)、フェルトなど織りの構造が異なります。
●主にテントの中の大事な場所に敷かれるもの。(メインラグ)
●ゴザのように野外やテントの入り口付近に敷かれるもの。(キリム)
●食事やお祈りなど生活習慣の中で状況に応じて敷かれるもの。(ソフレ、プレイヤーラグ)
<主にテントの中でしかれる生活のための敷物>
メインラグ=テント内の絨毯(パイル)、キリム、フェルトなど。
<テントの内外や夏の野営地で敷かれる敷物>
ギャベ、ジュルヒュール、トゥルなどの毛足の長いラグ。(時には敷布団の役割も兼ねる)。
①フェルト(ナマッド)=テント内の下敷…寒冷地や砂漠等の土の上に直接敷かれる、獣毛を圧縮したフェルト。
②絨毯=メインラグ(パイル)…テントの中の主要な部分に敷かれる毛足のあるラグ
③平織り(キリム・ジジム等)…テント内外を広く覆うための手軽な毛織物。
④祈祷用絨毯ープレイヤーラグ…(聖地の方角を示す祈祷の際に使われる敷物)
2.「かける」
掛け布(パルダ)は敷物や袋物と比べると薄くてしなやかで軽く、掛けることを主な目的として織られた毛織物です。
①エンシ(テントのドア用絨毯)・・・テントの入り口専用に織られる特別なデザインのラグで、主にトルクメン族の織るテントドア用の絨毯がエンシと呼ばれています。
エンシはトルクメン族の絨毯文化には欠かせないアイテムで、素晴らしいデザインのものが多く織られています。
また各支族によっても全体構成が違うためそれぞれの支族のエンシを収集するコケクターも存在しています。
②パルダ(テント内の間仕切)・・・パルダとはペルシャ語でカーテンを意味し、
カーテンのように掛けて使われる毛織物の総称ですが、同時にテント内の間仕切りとして目隠し的な役割もします。
パルダ(ぺルデ)には特に決まったデザインはありませんが、掛けるのが目的なので平織や綴織などの薄手が中心です。
③ジャジムもしくはガジャリ(多目的掛け布)・・・ タテ糸が表面に出る薄手の毛織物で、寝具の目隠し、
風呂敷、荷物を載せた家畜の背中カバーするなど多目的に利用される毛織物です。
ほぼ同じ構造を持つ毛織物がイラン系部族はジャジム、中央アジアのウズベク系部族ではガジャリと呼ばれます。
④モジェ(寝具隠し用布)・・・モジェとはペルシャ語で波を意味しますが、
波のような文様がその名前の由来なのか、それとも杉綾織による織文様によるのかは微妙です。
ジャジムと同じタテ糸が表にくる織構造ですが、さらに綴れ織と綾織を組み合わせて複雑な織構造が特徴です。
⑤シャフイー(寝具隠し用布)・・・テント内に積まれた布団や寝具を隠すために横に掛けられる細長い目隠し用(主に寝具)の毛織物。
パキスタン西部〜アフガニスタン西南部に暮らすブラーフイー族が織る細長い毛織物で、その殆どはヨコ糸で文様を織り出すヨコ糸紋織技法です。
3.「いれる・はこぶ」
袋物は遊牧民にとって欠かせない道具のひとつです。
遊牧民は移動時の家財道具の運搬、食物の保存や保管、衣類や生活用品の収納、テント内のクッション(家具)
婚礼の持参品を入れるなど、多種多様な目的で数多くの「いれ物」を織り続けてきました。
①.移動の際の家財道具を入れる袋
<サドルバッグ(鞍掛袋)、マフラシュ(布団袋)、トブレ(飼い葉入れ)など>
●ホールジンもしくはヘイベ(鞍掛袋=サドルバック)・・・移動の際に使われる荷物入れで、
主にロバなどの動物の背に掛けて使われるためドンキーバックと呼ばれることもあります。
人が乗る鞍と収納を兼ねた振り分型の袋物です。(ペルシャ語でホールジン、トルコ語でヘイベ)
●チャンテもしくはトブレ(飼い葉入れおよび小物入れ)・・・移動中の家畜の餌となる飼い葉を入れたり、生活道具や化粧道具、タバコやお茶などを収納するための小型の袋です。
②.保存保管用の収納袋日常生活に必要な食料(塩、小麦、穀物)や布団や衣類などの生活道具を収納するの袋類。
マフラシュ(布団袋)、ジュワル(大型袋)、ナマクダン(塩入れ)、バーリシト(枕およびクッション)などなど。
●ジュワルもしくはチュバル(大型の物入れ袋)・・・小麦などの穀物や衣類などを収納するための大型の袋。
*トルクメン族はパイル技法で横長のジュワル(チュバル)をクルド族やトルコのユリュックと呼ばれる遊牧民は縦長でスマック織りや縫い取り織りの袋を織ります。
●ナマクダン(塩袋)・・・家畜をコントロールするのに欠かせない岩塩を保管・収納する袋。動物の口が入らないよういに入口が括れた特徴的な造形です。
●バーリシトもしくはヤストック(枕)・・・(トルコ語でヤストック)細長い袋物で部族によって大きさが違いますが、縦方向の狭い方が入り口の場合とサイド部分にスリット(開口部)がつけられているタイプがあります。
ほとんどが表面パイル、裏面平織ですが、表面が紋織技法の物も時々見られます。
●マフラシュもしくはベシック(布団袋)・・・5面立方体の袋物で移動の時には主に寝具が入れられます。マフラシュは大型なのでラクダのこぶの両側に対で掛けられて運ばれます。テント内では、寝具の収納、赤ちゃん揺り籠になることもあるそうです。(トルコ語でベシック)
●ホールジンもしくはヘイベ(鞍掛袋=サドルバック)・・・移動の際に使われる荷物入れで、主にロバなどの動物の背に掛けて使われるためドンキーバックと呼ばれることもあります。人が乗る鞍と収納を兼ねた振り分型の袋物です。(ペルシャ語でホールジン、トルコ語でヘイベ)
●チャンテもしくはトブレ(飼い葉入れおよび小物入れ)・・・移動中の家畜の餌となる飼い葉を入れたり、生活道具や化粧道具、タバコやお茶などを収納するための小型の袋です。
今回は19世紀末〜20世紀初頭の西アジアの遊牧民たちが、伝統的な生活を営んでいた最後の黄金期におられた毛織物を集めました。
実物に触れていただくことも可能です。
是非この機会にご高覧いただければ幸いです。
参考資料:tribe-log.com 遊牧民の用と美◇ トライバルラグと染織品@清瀬市郷土博物館
tribe-log.com 遊牧民の用と美◇ トライバルラグと染織品@清瀬市郷土博物館 その2(遊牧と定住)