倉敷と民藝とトライバルラグ

Posted by tribe on 2023年9月27日

民藝の街として知られる倉敷で3回目の展示会を行います。

少し前に『民藝とくらしき』吉備人出版 金光章著書を読みました。
著者の金光章氏は岡山県の現在の総社市に生まれ岡山県で建築事務所を開き、その後岡山女子短期大学、岡山学院大学で教鞭を取られ、岡山民藝協会の会長も務められた倉敷民藝のオーソリティです。

金光氏はFMくらしき局の「くらしき、くらしき」という毎朝の番組の『倉敷歴史豆知識』のコーナーを延べ2年3ヶ月、計116回も続けてこられました。
この本は放送に使われた原稿を文字に起こし、丁寧にまとめられた随筆集です。

この本を読むと倉敷と民藝の関わりの深さをあらためて知ることができます。

本の中で特に興味深かったのが、建築家でもある金光氏が『20世紀の初め頃、機能主義が現れてそれまでの石などの西洋建築にゴテゴテと付いていた無駄な装飾を一切やめて、すっきりさせようという動きがでてきました。(中略)不必要な飾りは全て止めて、機能がそのまま露出した簡素な美しさを理想としました。』と述べています。

少し前に建築家の方と話をする機会があったのですが、多くの方々がバウハウスなどの影響を受けて、装飾を排除したいわゆる「モダン」なスタイルを好むように感じていました。

金光氏はその文章の後で、『用即美はそういう無駄を省いた美しさでもあるのですが、民藝の場合、もう少し幅が広く、『用いる』に心の要素が入ります。作る人が用いる人の立場に立って、ためになるモノを作る。材料を選んで誠実に作る。そういう気持ち、こころがけ、それが結局民藝で言おう「用の美」になると私は解釈します。』と述べています。

長い間「用の美」とは何かを模索していたので、この言葉は心に響きました。

例えば遊牧民に欠かせないサドルバッグの底や角の部分は毛足のあるパイル(絨毯)が使われます。
補強ももちろんですが、袋の乗せた時に動物の皮膚が傷つない配慮だと聞いたことがあります。
またその角部分が広げたときにはとても面白い形状として見るものを楽しませてくれます。

遊牧民の生活の道具には、動物や使う人に対する思いやりの気持ちを感じることが多くあります。
これも民藝にとって大切なことかと思いました。

今回の展示でも敷物を中心にサドルバッグや塩袋、動物の飾りなども展示したいと思っております。
多くの人たちに見ていただければ嬉しいです。