注文にはご注意を!ほとんど同じ内容なのにタイトルが違う2冊のキリムの本

Posted by tribe on 2014年10月19日

他の回でも紹介しましたが、絨毯関係の本は世界中でも非常にたくさん出版 / 流通されています。国内だとデザインやアート書籍の専門店などたまに見かけることがあると思いますが、欧米ではそのラグやキリム版とも言えるテキスタイル書籍専門店が数えきれないほど存在しているんです。
特に「キリム」は日本国内でも知名度が高いテキスタイルですので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。そこで今回は、結構ニッチな情報ではありますが、絨毯やキリム好きが書籍を選ぶ際に間違えやすい2冊の書籍を紹介しておきたいと思います。

Antiuqe Kilims of Anatolia & The Tribal Eyes
Antiuqe Kilims of Anatolia & The Tribal Eyes

2000年出版「Antiuqe Kilims of Anatolia 」・1993年出版「The Tribal Eyes」ー2冊ともにNYにTurkana Galleyのオーナーでもありキリム研究者でもあるPeter Davis氏による著作です。
私も当初まったく違う本だと思い、別々に注文してしまったのですがが内容はほぼ同じものでした。
違いは「Antiuqe Kilims of Anatolia 」の方が紹介されているキリムが23枚ほど多いのと、ページ最後にGlossary「用語集」が加えられている事、そして最初の書籍紹介文の紹介者が変っている点ぐらいです。ですのでもし違う本と思っていたらご注意ください。
当然「Antiuqe Kilims of Anatolia 」のほうが新作なので、元々あった「The Tribal Eyes」に新しいキリムと情報を付け加えた改編版のようなものなんです。

「The Tribal Eyes」は表紙の柔らかいペーパーバックなのにたいして「Antiuqe Kilims of Anatolia 」はハードカバーになっています。
個人的には表紙の雰囲気やタイトルなどから「The Tribal Eyes」のほうが好きですが、どうしてほぼ同じ内容の本が違うタイトルで出版されたのかは不思議です。

世界的にも名書と言われ、愛読書の一つであるJon Tompson氏の「Caper Magic」と「Oriental Carpet」も同じように中身はほぼ同じですが、タイトルがまったく違います。
こちらは最初に出版された「Carper Magic」が1988年にロンドンで行われたICOC(国際絨毯会議)の展覧会に合わせた図録的な出版物であり、その後に地図や解説などが加筆されたOriental Carpet」のほうが、本格的な研究書として出版されたという経緯があるようです。

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Carpet Magic Oriental Carpet by Jon Thompson

話が逸れましたが、「The Tribal Eyes」と「Antiuqe Kilims of Anatolia 」はトルコキリムとその背景にスポットを当てた当時としてはクオリティの高い内容だと思います。
まずは、トルコの遊牧民の歴史と生活。キリムが織られるまでの解説、素材、染め、織り機、織り方、文様の意味、織り手の存在など詳しく述べられています。文様の意味と遊牧民にとって文様はヴィジュアルメッセージ=記号としての意味を持つものである事が熱心に語られています。

紹介されている73点 「The Tribal Eyes」では50点のキリムも素晴らしいモノばかりで、欧米でアナトリアキリムがアートとして受け入れられ、高い評価を得た時代背景が感じられます。

文様の掘り下げた意味と同時に、普通地域(コンヤ・マラティヤ等)で分類される事の多いアナトリアキリムをユンジュ系・カラケチリ系・アイディン系ユリュックホタミストルクメン系・ラシュワンクルド系など集積地ではない遊牧系部族に分類している事も共感できました。
アナトリアの伝統を持つユリュック=遊牧民、トルクメン系、クルド系などの特徴が見て取れる事も他にはあまりない分類です。
ペーパーバックの「The Tribal Eyes」だとアマゾンなどで20ドル程度で購入できそうですので、アナトリアのカラフルで華やかなキリムがお好きな方には特におすすめです。

Player kilim
Player kilim

こういった形で、トライバルラグやテキスタイル系の書籍には「ほぼ内容は変わらないのにあたかも違うタイトルで、違う内容の本の様に出版されているケース」がたまにあります。
もし購入を検討されている方がいらっしゃったら、ー ”ほとんど変わらないのは知っているけど、両方揃えておきたい” という方でない限りは ー ぜひお気をつけください。