ヴィンテージの風格書籍『東洋の絨毯』と現地でのラグ購入注意点
Posted by tribe on 2014年10月21日
ネットで偶然に見つけた翻訳本
長いあいだ探していた古い展覧会の図録を見つけ、すぐに注文したところ「申しわけないがその図録はもう無くお金はお返しします」という連絡でがっかりした事がありました。探していたのは松涛美術館で行われた故松島きよえさんのコレクションを集めた「中近東の染織」という、日本で初めて行われたトライバルラグの展覧会の図録です。
そのかわりに偶然見つけたのが「東洋の絨緞」という本で、作者はプレーベン・リーベトロウ氏というデンマーク人の書いた絨毯解説書です。
1964年出版というと半世紀も前になりますが、大阪国際書房から津田寅之助氏の翻訳で出版されています。雰囲気からして相当なヴィンテージ感が漂っていましたが、案の定一部のページの上部が袋とじのように繋がっていました。おそらく製本の際のミスなのでしょうがペーパーナイフでページをカットする感覚は新鮮でした。50年前の新品で、まさしく本物の新古品(ヴィンテージ)を偶然に入手できたというわけですね。当時の価格で¥1500はかなり高価だったことでしょう。全体は150ページほどで、一気に読んでしまいましたが、大変によくまとまった入門書で、今時こんな本が普通に売られていたらかなり役立つのにと思います。
北欧ならではの絨毯クリーニング
書籍の中で初めて知った豆知識として、
「新雪の上に絨緞を広げる。 裏を上にして注意深くパタパタたたく。そうするとパイルが雪の中に埋まる。すっかり叩き終わったらこれを持ち上げて雪を振り落とす。汚れがひどければこれを繰り返す。」
という描写が出てきます。これは北欧ならではの良いアイデアだと目からウロコのメンテナンスでした。雪は色々な汚れを綺麗にする働きがありそうだとは感じていましたが、絨毯クリーングにも使えるというのは驚きの新事実です。北海道や東北地方などで絨毯クリーニングをお考えの方は試してみる価値はあると思います。
ただ水分を含んだままですと羊毛に良くないので、終ったら良く乾かしてから使う点にはご注意を。
現地で購入する時の注意とは
もう一つユニークなエピソードが紹介されていました。
「ハッサン、メートルの巻き尺を持ってきてくれ!」
「ご主人、買い付けの時に使うのですか?それとも売り込みの時用のどっちですか?」
つまりこれは、買い付けと売り込みとそれぞれのための巻き尺がるということですね。恐らく買い付け時には実際よりも小さく、売り込み時には実際よりも大きく測って商売をするための工夫というか、今の世の中で言えば詐欺まがいなやり方が存在していたという描写です。
また、コメントとしてオリエント地域(現地)で絨毯を購入する場合は十分に注意するようにという心得も書かれています。出来るだけ自国で購入したほうが安全であるというアドバイスです。実際のところ観光旅行などでは現地の百戦錬磨の絨毯商人から高額な値段で絨毯を買わされてしまったという人も少なくないでしょう。かなりの絨毯通を自負していてもその場の雰囲気や旅での高揚感から思わず衝動買いということも少なくないのです。
そんな場合も返品がしづらい海外は避けた方が良いと書いてあります。現地の絨毯商達からも少しばかり絨毯をかじった事のある人の方が、売るツボを押さえやすいという話を聞いた事があります。個人的には相手の懐に飛び込むような、慣れと間合いが必要だと思いますが、旅先では中々難しいことでしょう。
この当時は大変に高価だったカラー印刷による絨毯の図録が64点も掲載されていて驚きます。この本をこの時代に出版した大阪国際書房には敬意を評します。
我が国における最初で最後の幅広く全体が紹介された絨毯豪華本かもしれません。