トライバルラグが国立東京博物館にて展示されています。
Posted by tribe on 2015年3月29日
もっともっと早く紹介するべきでしたが、上野の国立東京博物館でかなりコアなトライバルラグが展示されています。今年は未年=羊毛ということもあって記念の展示だと聞いていますが、昨日やっと訪ねる事ができました。世界各地の貴重な美術品を集める国立東京博物館(東博)のアジア館地下1階の一番奥のアジア染織コーナーです。少しわかりにくい場所ですが、一番奥なので静かにじっくりと見る事ができました。
「西アジア遊牧民の染織品」4月5日(日)まで
残すところ後一週間ですが、ちょうど上野公園のさくらも見頃な事でしょう。本当におすすめの展示です。
遊牧民に魅せられた人、松島きよえコレクション
遊牧民研究家、松島清江氏が1960年代から1980年代にかけて現地で収集したコレクションを展示します。インド西北部からパキスタン、アフガニスタン、イランからトルコにかけて遊牧を営んだ部族が染め、織り、制作したハンドメイドの衣類や袋物、テント用敷物。家畜の毛をつむいで織り、あるいはフェル トにして作られた、各部族の特色ある色と文様の世界を紹介します。
今回の東博の展示品のほとんどは松島さんの収集したものですが、松島さんも熱狂的に遊牧民に魅せられた人の一人です。遊牧民の研究と染織品の収集の旅の途中、バスの交通事故で69歳という生涯を終えてしまったことは本当に残念ですが、1985年に渋谷の松涛美術館で行われた 『中近東遊牧民の染織』、1997年発行の『遊牧民に魅せられて』〜松島コレクションの染織と装身具〜という展覧会の図録を残しています。
現在ではこの2冊が彼女を知る僅かな資料となっていますが、日本語で読める数少ない遊牧民とその染織品に関する貴重な情報と言えるでしょう。
遊牧民に愛された人、松島さん
松島さんはご主人がWHOのお医者さんだった事で、アジア・アフリカの辺境地域を巡るうちに、毛織物に出会い、そこからこの世界にの魅せられていったようです。
トルコ~イラク~イラン~アフガニスタン~パキスタン~インドと西アジア~西南アジアを駆け巡り、遊牧民と行動を共にしながら彼らの生活に溶け込み、同時に毛織物を収集された貴重な日本人です。若いころから体得された「踊り」という行為を通して、部族の人々とコミニュケーションをはかられたようですが、特に野性味あふれる部族に惹かれ、昔ながらの部族らしさを残した人々に魅せられてたいたようです。彼女の残した言葉に「部族意識の高い遊牧民ほど、織りの技術や文様が美しい。」まったく共感します。
グローバル化の波に呑まれる前の部族社会を旅された貴重な経験をお持ちであったことと想像しています。今生きていらっしゃればどれだけ興味深い話が聞けたかと思いますが、このところは入るのに困難な、シリア、イラク、アフガニスタンなども積極的に廻り、遊牧民の研究と収集を重ねられたようです。
トライバルラグが博物館で見られる!という期待?
彼女が亡くなってから生前に収集されたコレクションのうち民族衣装や装身具は文化学園服飾博物館に収められ、敷物や袋物などは東京博物館に収蔵されたと聞いています。それから20年は経っていますが、展示されたのは数えるほどです。また今回の展示には2点程、他の方の寄贈品が付け加えられていました。トライバルラグファンにとってはせっかくの貴重な展示でしたが、展示された作品リストほぼ国名で部族の名称がほとんど無かったことが少し残念でした。ホームページで紹介されているリストにあるロリ族(ルル族)のキリムが解説ではカシュガイ族になっていたりします。また今回のものの多くは遊牧民の生活の道具として織られたものでしたが、その用途も今ひとつわかりにくい感じがしました。ここでは詳しくは触れませんが収集してから20年ほとんど調査研究が行われていないのではないかと感じます。この20年間欧米で飛躍的に進んだトライバルラグ研究とコレクションと比較するつもりはないのですが・・・・。
このあたりも日本ではトライバルラグが受け入れられないことと関係しているかもしれません。今後とももさらにこの魅力を伝えていく必要がある事を再認識させられた国立博物館の展示会でした。。
写真:国立東京博物館からの引用 公式ホームページ http://www.tnm.jp/