ブランド品と世界に一枚しかないトライバルラグ
Posted by tribe on 2014年10月18日
ユニクロやH&Mなど、これらのブランドはもうみなさん当たり前の様にご存知ですよね。かつては年に1度はくらいユニクロを利用していました。
H&Mの広告など、駅でもサッと通りすぎて行くというのもあるのでしょうが、一見ハイファッションブランドとの違いが分からないほどです。
ユニクロなどに代表されるファーストファッションのクオリティが上がっている現在、一流ブランド品と一般のモノとの違いとはどこにあるのでしょう?
今回はその辺りを始まりとして、ファッションブランドとトライバルラグの関係について書いてみたいと思います。
銀座の並木通りに「サンモトヤマ」という最高級ブランドを扱うお店があります。サンモトヤマと言えば、日本初のセレクトショップとして銀座ブランドストリートの起源と定めても遜色ない位置づけのショップです。大人の男女に向けて「常に変わらない上質」を提供し続けていることでも有名ですね。
それは創業者の茂登山長市郎氏セレクトによるモノだけを集めて紹介しているからでしょう、そのセレクトされたモノの中にはペルシア絨毯なども入っています。偶然テレビで茂登山氏のインタヴューを見たのですが、「ユニクロなどのファーストファッションの銀座進出も歓迎する」という余裕のあるコメントが印象的でした。
これまでファーストファッションと老舗のブランドショップとの間には、共通点があまり感じられなかったからです。
多分それは、ファーストファッションも1つの「ファッションブランド」として求められているということの象徴なのかもしれません。
ファーストファッションとブランド
一時の勢いはないものの、銀座、表参道、南青山あたりの東京でも最も洗練された場所には、有名ブランドのショールームが立ち並んでいます。
広々としたスペースにさりげなく置かれるモノは、付加価値の高そうな気配がして、高額な値段にも納得してしまいます。
日本人のブランド好きは海外でも良く知られていて、ペルシア絨毯の世界でも日本向けの高級絨毯には必ずと言っていい程織り工房のネームが織り込まれるようになっています。30年前の輸入が少なかった頃にはほとんど無かった現象です。ブランド名(織り工房名)だけを後から織り込んでいるのを見かけた事もあります。
ところが最近はその辺りの事情が変わりつつあるように思われます。
ブランド店に変って登場してきたのが、店のオーナーが自社・他社を問わずに商品を選ぶセレクトショップ型の店舗です。
セレクトのセンスとタイミング、売り方など「キュレーター能力が問われる形式の店舗」とも言えます。
考えて見れば日本人全体が洗練され、ブランドネームに頼らなくても、品物を選んだり個性的なオーナーの選ぶものに共感して買い物をする様になってきた。〜そんな時代になってきているのではないでしょうか。
もちろんブランド店で買い物するのも満足感は高いのですが、セレクトショップで提供される「スタイル」を選ぶと買い物以外にも1つのライフスタイルを見つけ出したという、「買い物よりも更に上のレイヤー」を手に入れた満足感があります。
それが現在のセレクトショップの人気の秘密なのかもしれません。
青山BLOOM&BRANCHのTシャツ
ファーストファッションとブランドの違いーモノの本質が問われる時代に?
実は私も学生時代、現在成功しているセレクトショップ(名前は伏せますが)の前身的なアパレル系ショップで働いていた事があります。失礼ながらその時は正直ここまで全国に展開する大企業になるとは思っていなかったのですが、その人気の要因はその店の個性的な商品構成にあります。興味のない人には同じように見えてしまうかもしれない白いTシャツでも、ファーストファッションやスーパー系の店舗とセレクトショップでは大きな違いがあります。
ではその違いとはなんなんでしょうか?Tシャツの場合でも素材、色、全体のシルエット、袖の長さ、襟の縫い込みの太さ、色々な点でやはり自分のイメージに近いTシャツを選びたいですね。その中でも一番大きな違いは、何年か着込んだ時に出てくる味わいや、時間をかける事で生まれてくる色や形などの風合いです。
素材の良さは第1条件として大切なのですが、同時に洗い晒したときの雰囲気や襟や袖の伸び具合、なじんでくる感じといった「その後の経過」そのものにも価値があるのです。コストと効率を優先させるただ機能だけのものではない、「こだわり」にも価値を置いた結果といえるかもしれません。
「自分の好きなセレクトショップが選ぶ」価値。それこそがファーストファッションには無い点だと思います。もちろんファーストファッションもスタイルや機能の提案はしますが、それはごく短いスパンでのハナシです。コスト/スピード/機能の提案はできても、「その後の経過」まではファーストファッションでは提案できないのです。
そういった点を重視するセレクトショップが成功しはじめているということは、モノの本質が問われている時代になって来たのかもしれない・・・などと思う事が増えました。
優越感から個人的満足感へ
ブランド品や高級外車に人気の集まった時代は優越感が優先された時代ともいえるでしょう。当然みんなが同じものを持つようになると優越感はなくなってしまいます。個性的な人からは高額なブランド品に多くが群がること自体が没個性に見えてしまうからかもしれません。今は豊かになりつつあるアジアの国々で販路を広げる高級ブランドを横目にみながら、そういえばああいう時代もあったと懐かしんでいる風さえもあります。
新しいモノに敏感で高感度な人たちはどこに目を向けているのでしょうか?昔は最新の雑誌などで一秒でも早く情報をとらえ、それを自分のものにしてきたような人たちです。
ここでようやく、、、このブログの主題とも言えるトライバルラグの登場です。そういう人たちにこそトライバルラグを紹介して行きたいと思っています。
色々なモノを見て、それらを使いこなして来た人達、流行には流されずに自分の物差しで本質をとらえる人達。。そういった方にこそ部族の手仕事の面白さは馴染むモノと言えるでしょう。手にした時よりも5年後10年後には、もっともっと気に入っているモノ。使っている事でいつも満足感を得られるモノだからです。
実際に東京でも地方でもそうですが、最近はセレクトショップでアンティークなトライバルラグをディスプレイしているのを見かけます。ここでも面白いもので、一流のショップであればあるほど価値の高いラグを、本当に良い見せ方でディスプレイしているんですね。
反対に色々な事情もあったり、方向性の違いもあってか本当のトライバルラグではなく、模造品やレプリカ、もしくはそういったテキスタイルパターン(ラグなどに入っている模様 / 文様)を真似て商品に落としこんでいるショップもあったりします。
私の経営するトライバルラグショップ「triBe(トライブ)」に時々ラグのレンタルやリースのご相談を頂くのですが、昔は民族系雑貨や飲食店が多かったのが、最近では映画の撮影やカフェ、そしてセレクトショップからリースの申し込みを頂くことが多くなってきました。
そういった面でもかなり実感させられているのですが、インテリアやファッションを越えて「価値」をセレクトしていくと、自然にトライバルラグを含む「民族や部族の手仕事」もその価値の中に含まれていくのです。
アンティークラグ = 1点モノ
これからこのブログでも、どうしてトライバルラグやテキスタイルに価値があり、そしてその魅力が何を中心に、どこからきているのかじっくり紹介して行きたいと思っています。
色々な魅力に溢れていますが、そのひとつとして今日はトライバルラグの魅力のうち大きなポイントを紹介しておきたいと思います。
それは「世界に一枚しかないモノ」だということです。
仮に同じ人が同じテントで何日後かに織ったとしても同じにはなりません。あまりにも個人的な作業の側面が強く、再現性が薄すぎるからです。
たとえば同じ素材で同じ染料を使い最高の技術者が復元を試みたとしたらどうでしょう。
イランでも最高の技術と職人を抱えるMiri工房という会社が古典絨毯の復元を行っています。数年前に日本に住むイラン人がその代理店となって復元絨毯と本物を隣に並べて比較しながら美術館で展示する企画がありました。
並べてある本物と復元を見比べて愕然としました。その2枚はまったく別なものに見えたからです。このように、絨毯というものは本場の最高の職人でも復元が難しい物品なんですね。年が経つ事による風合いや味わいは、トライバルラグの様な分野だと人工的には出せないのです。
この世界に一枚しかない「トライバルな手仕事」を見極める大切な『目』を、現代のセレクトショップに関わる人達は自然に身につけてきているのでしょうね。
このブログを見ている読者のみなさんにも、ぜひその「目」や感性を身につけたり、感じていただきたいと思っています。
一級セレクトショップが選びはじめたトライバルラグ。その本物の魅力を見るだけでなく、ぜひ肌でも感じて欲しいと思います。このブログがそのきっかけや手助けになれば、心から嬉しく思います。
写真引用:セレクトショップ 青山BLOOM&BRANCH