じゅうたんの教科書 第二章 絨毯の基礎知識 〜道具としての毛織物1〜 「しく」
Posted by tribe on 2021年8月24日
じゅうたんの教科書 第二章 絨毯の基礎知識 その1.
ここからはわかりやすく、やきもの全般についてのテキスト「やきもの教科書」のに沿って絨毯の基礎知識をまとめててみます。
今回は写真が多めですが、どうぞお付き合いください。
Ⅰじゅうたんの名称
メダリオン・・・絨毯の中央部分に良く見られる中心柄、トライバルラグでは菱形のメダリオンが並んで表現される。
フィールド・・・絨毯のメイン部分の名称。ボーダーとメダリオンの間の部分。
ボーダー・・・絨毯の周りに廻らされた周り縁文様。
コーナー・・・中心にメダリオン文様のある絨毯の四隅に見られる、角を埋める文様。
セルベッジ・・・絨毯を織るのに欠かせない上下にあるタテ糸部分。処理の仕方は様々。
下は典型的なペルシャ絨毯のフォーマットですが、普段にあまり使うことはないので特に覚える必要はないと思います。ネット検索でも良く出てきます。
Ⅱじゅうたんの種類
道具としての毛織物 (機能分類)
まずは毛織物のルーツと考えられている、遊牧民の生活の中から生まれた「トライバルラグ」の機能を分類してみます。
(現在織られている商業用絨毯多くは、敷物用として織られています。)
1.「しく」 敷物
敷物は敷かれる場所や環境によって、パイル(絨毯)、平織(キリム)、フェルトなど織りの構造が異なることがあります。
敷く場所や用途によっていくつかに分類してみます。
●主にテントの中の大事な場所に敷かれるもの。(メインラグ)
●ゴザのように野外やテントの入り口付近に敷かれるもの。(キリム)
●食事やお祈りなど生活習慣の中で状況に応じて敷かれるもの。(ソフレ、プレイヤーラグ)
<主にテントの中でしかれる生活のための敷物>
メインラグ=200X130cm程度の絨毯(パイル)、キリム、フェルトなど。
左はトライバルラグを代表すイラン南部遊牧民ハムセ連合のアンティークラグ。(230x150cm)19世紀
右はイラン西部のザグロス山脈を越えて移動するルリ族のアンティークラグ。(220x145cm)19世紀
<テントの内外や夏の野営地で敷かれる敷物>
ギャベ、ジュルヒュール、トゥルなどの毛足の長いラグ。(時には敷布団の役割も兼ねる)
*一番上の写真がウズベキスタン〜アフガニスタン国境の山岳地帯で織られるジュルヒュールです。
左はトルコ東部の寒冷地シールト地方で織られる山羊毛の敷物、
右はトルコのトゥルと呼ばれる毛足の長い敷布団と敷物を兼ねるラグ。
左はイラン西部の山岳地帯を移動するルリ族のギャベ、
右はイラン南部のファルス地方のカシュガイ遊牧民の1990年代に織られた商業的なギャベ。
*ギャベもしくはギャッベは日本では大人気のラグですが、本来はザグロス山脈を移動する遊牧民(ルリ、バフティヤリー族の敷布団などとして余った羊毛や山羊毛で自由に織られたラグです。
1970年代にヨーロッパで大人気となりそのご商業的に大量生産されるようになりました。
①フェルト(ナマッド)=テント内の下敷…寒冷地や砂漠等の土の上に直接敷かれる、獣毛を圧縮したフェルト。
左はアフガニスタン中央部のハザラ族の羊毛を縮絨したフェルト
右はアフガニスタン西部のタタール族の綴織の敷物(キリム)
②絨毯=メインラグ(パイル)…テントの中の主要な部分に敷かれる毛足のあるラグ
左はアフガニスタン北部のトルクメン族のメインラグ
200x130cm 20世紀初め
右はアムダリア川流域のべシールトルクメンのラグ
158x117cm 19世紀 Dr.Jon Thompson コレクション
左はアフガニスタン西部のアドラスカン地方のバルーチ族のメインラグ
220x130cm 19世紀
右はイラン東部〜アフガニスタン西部のバルーチ系テイムーリ族のメインラグ 230x170cm 19世紀
③平織り(キリム・ジジム等)…テント内外を広く覆うための手軽な毛織物。
左はザグロス山脈周辺のルリ族のキリム(綴織)
150x120cm 19世紀
右はイラン北西部の山岳地帯を移動するシャーセバン族のキリム(綴織)
200x100cm 19世紀
④ソフレー食卓用敷物
●ダイニングソフレ(細長いサイズ)・・・食事の際に絨毯などの敷物を汚さないように敷く。撥水性の高いラクダや黒毛羊の毛を使用して織られるテーブルの役目をする敷物。
左はアフガニスタン西部のバルーチ族の食卓用ソフレ 190x60cm 20世紀初め
中はイランホラサーン地方のクルド族の食卓用ソフレ 220x70cm 20世紀初め
右はイランホラサーン地方のバルーチ族の食卓用ソフレ 150x60cm 19世紀
●ナン包み用ソフレ…(正方形) …主食のナンが冷めたり乾いたりしないための風呂敷のような役割をする保温保湿用布。
左はイラン中部のカモ村のナン包み用ソフレ 125x120cm 20世紀
右はイラン中部のカモ村のナン包み用ソフレ 100x105cm 20世紀
⑤.祈祷用絨毯ープレイヤーラグ…(聖地の方角を示す祈祷の際に使われる敷物)
平織りやパイル(絨毯)で120x70cm程度の持ち運びが可能な毛織物。
左はイラン〜アフガン国境のバルーチ族のドクタレ・カジィと呼ばれる祈祷用絨毯
150x90cm 19世紀
右はアフガニスタン西部のアドラスカン地方のバルーチ族の祈祷用絨毯
125x80cm 19世紀
次回は〜道具としての毛織物2〜 「かける」を紹介したいと思います。
参考サイト:tribe-log.com 遊牧民の食卓布、ソフレにこめられた思いとは?
tribe-log.com 実は色々な役割をもつトライバルラグ
tribe-log.com 「祈りと道具」展示会トークのお知らせ
tribe-log.com 裁判官の娘(ドクフタレ・カジイ)と呼ばれる絨毯 バルーチラグ(第1回)