トライバルラグマニア憧れのトルクメンエンシ vol1.
Posted by tribe on 2017年5月10日
仕入れの旅に出かける際にいつも思い出す言葉があるのですが、それは「虎穴に入らずんば、虎児を得ず(危険を冒さなければ、大きな成功は得られないことのたとえ)」という諺です。
戦争中のイランやアフガニスタンの国境地域、パキスタン西部など少し行きづらい地域に行く理由は、「どこかで良いもの出会えるのではないか?」という期待からに他なりません。
イラン人の友人も掘り出し物を見つけた時に、「シェカール ショディ!」と言ってくれるのですが、直訳すると「良い狩りをした!」というような意味です。今回の仕入れはまさに「シェカール」続きの大漁となりました。
ついに見つけた!トルクメンエンシ絨毯
トライバルラグ好きにとって憧れの一枚といえば、トルクメン族のエンシ(テントドア用ラグ)は外せないのではないでしょうか?
ここ20年間状態の良いエンシに出会う機会がありませんでした。海外のオークションや専門書などの写真を見ながらいつかは手に入れてみたいと願っていました。これまで現地のバザールやショップにはほとんど姿を現さなかったエンシですが、今回の仕入れでついに見つけることができました。
見つけたのはエンシの中では比較的数の多いテケ族のものですが、状態も良好でテケ族らしいキリットした切れ味と品格が感じられます。エンシの魅力は独特なデザインにあり、テントの入り口専用というトルクメンならではの絨毯文化の結晶ともいえるでしょう。
トライバルラグの最高峰サロールエンシ
エンシの最高峰といえばトルクメンサロール族のものです。大げさですがその気品に溢れた全体像はトライバルラグの頂点に輝く一枚といえると思います。長い間世界の表舞台に姿を現さない幻の一枚でしたが、以前にrug rubbitというサイトで紹介されてました。状態はあまり良くないものの、やはりサロールにしかない完成度とワイルドながらも高貴な雰囲気を併せ持っていました。
サロールエンシを最初に見たのは、Jon Thompson氏の名書『Carpet Magic』という本の写真です。他のどの絨毯とも違うデザインバランスと色彩の深さに加え、ユニークなモチーフがアクセントになっていて、一度見たら忘れられないオーラを醸し出していました。
このサロールエンシは本の著者でもあるJon Thompson氏が所有しているものです。
1993年にニューヨークのsothbysのオークションハウス行われたJon& Thompsonトルクメンコレクションに出展されるのではないかと、ファンの期待は高まったのですが、結局この絨毯だけは出展されませんでした。その後一度だけ「HALI」マガジンのオークション情報で見つけたことがありますが、驚きの値段で落札されていました。おそらくトライバルラグの落札価格としては最高額と言えるかもしれません。今回はこのサロール・エンシを含めたトルクメン族の最高傑作といえるエンシという絨毯の深みに迫ってみたいと思います。
エンシのデザインが意味するもの
世界の絨毯愛好家による「turkotek」 というマニアックな投稿サイトがありますが、膨大な絨毯研究者や愛好家による情報が集まっています。
そこで紹介されていた『Salon 130: The Kush Motif in Turkmen Ensis』(トルクメンエンシに見られるクシュ=鶴モチーフ)by Louis Dubreuilを参考にしながらトルクメンエンシの紋様にこめられた意味の一端をひも解くとかが出来ればと思います。